ジャガイモの育て方

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ジャガイモ

ジャガイモは南米のアンデス山脈が原産で、日本には江戸時代にオランダ船によって長崎に伝えられました。本格的に栽培されるようになったのは明治時代になってからです。

主産地は北海道や長崎で、北海道産は8割を占めます。主な品種は男爵とメークインで、日本で栽培されている品種の4割をこのふたつが占めています。

主成分はデンプンですが、ほかの芋に比べてカロリーが低く、「畑のリンゴ」といわれるほどビタミンCが多く、デンプンがビタミンCを包んでいるので、加熱しても壊れにくいのが特徴です。

栽培の手間があまりかからず、約3か月半という短期間で収穫でき、長期保存もできるので、家庭菜園で人気があります。

北海道や東北などの涼しい気候のところでよくとれますが、その他の地域でも簡単につくることができます。

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「粉質」と「粘質」

ホクホクとした食感の男爵はコロッケや粉ふきいもなどがおいしく、ねっとりとして煮崩れしにくいメークインはカレーやシチューにぴったりです。

男爵とメークイン以外にも、品種はたくさんあります。食感がホクホクとした粉質か、ねっとりした粘質か、品種の特性を理解しましょう。

ジャガイモの育て方

栽培中のジャガイモ

ジャガイモは連作を嫌います。同じナス科(ピーマン、トマト、ナスなど)の後にジャガイモを植えるのは避けます。

弱酸性の土壌を好みます。土壌がアルカリ性に傾くと、芋の表皮がざらざらになる「そうか病」が発生しやすくなるので、強い酸性の土壌でなければ、石灰を入れる必要はありません。

種芋から伝染する病害が多いので、食用に市販されているものや、自分で収穫したものは使わず、かならず病気のない検査済みの種芋を植えつけます。

芽は、霜にあたるとダメになるので、無理な早植えは避けます。遅霜が降りそうなときは、芽に土を被せて覆います

高温多湿に弱いので、種イモの植えつけが遅れないように注意します。

栽培の概要

生育温度 15~24℃。
土壌酸度 5.0~5.5。
連作障害 あり。3~4年以上あける。
育てやすい品種 春作(春植え):とうや、メークイン、キタアカリ、男爵、インカのめざめなど。
元肥 元肥を入れる。苦土石灰は入れないか、控え目にする。
植えつけ時期 春作:2月中旬~3月下旬(要霜対策)。
植えつけ方法 畝幅:90cm。
黒マルチ:あり。(なくても良い)
株間:2列、30cm~40cm。
植え方:種芋の切り口を下にして、7cm程埋める。
栽培中の管理 芽かき:背丈が10cmになったころ、2本~4本だけ残す。
追肥:芽かきの後、化成肥料を株元に施す。
収穫 茎や葉が黄変したら、天気の良い日に収穫し、1週間ほど日陰で乾かす。
病害虫 主な病気:そうか病、疫病など。
主な害虫:アブラムシ、ニジュウヤホシテントウ、ナストビハムシ、ホオズキカメムシなど。

栽培のポイント

  • 連作をしない。
  • ウイルスに感染していない種芋を入手する。
  • 種芋に日光をあてて芽の緑化を促す。
  • 苦土石灰は控える(もしくは施さない)。
  • 霜に弱いので注意する。
  • 芽かきをしてよい芽だけを残す。
  • 傷のある芋は腐りやすいため、保存しない。

栽培時期

ジャガイモの栽培時期

※品種や地域によって栽培時期は異なります。事前に確認してください。

春と秋に作れますが、秋作は病害が多く、収量も少ないので、春作がおすすめです。

育てやすい品種

【春作】男爵(早生種)、メークイン(中生種)、キタアカリ、トヨシロなど。

ジャガイモの品種には「粉質」と「粘質」の特性があります。用途に合った品種を選びましょう。

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植えつけ時期を守ろう

ジャガイモの生育適温は15℃~24℃です。

寒さに強く、0℃でも生育しますが、霜には弱いため、霜にあたると茎や葉が枯れます。枯れても再生しますが、生育の遅れは収穫に大きく影響します。

また、暑さにも弱く、25℃以上になると芋が急速に肥大して生理障害を起こす恐れがあり、30℃以上になると芋が形成されなくなります。

霜の降りない地域では、早植えができます。冷涼な気候の地域では、遅植えができます。

ただし、霜の降りる地域や、夏の暑さが厳しい地域では、霜の心配がなくなってから出芽(地上に芽が出る)するように種芋を植えつけ、暑さが厳しくなる前に収穫します。

この限られた期間に栽培できるように、植えつけ時期をしっかり守りましょう。

種芋の用意

ジャガイモの種芋

スーパーなどで食用として売られているジャガイモや、自分で収穫したものはウイルス病に感染している可能性があるので、かならず専用(ウイルスフリー)の種芋を用意します。

浴光育芽をして植えるためには、植えつけ予定の一月前に種芋を購入します。

種芋の大きさは、30~40gならそののまま植え、それ以上なら切り分けて植えます。

浴光育芽

窓際などの日あたりよい場所で光をあてる

種芋を植える前に浴光育芽(よっこういくが)をしてから畑に植えることで、出芽が10日以上促進され、出芽(地面から芽を出す)がそろい、芋がスムーズに大きく成長していき、収穫が早まります。

出芽が早まるため、早くからしっかり栽培でき、暑くなる前に収穫できます。

浴光育芽のやり方は、植えつけの20~30日前に、雨などのあたらないような軒下や庭先、窓際などの日あたりよい場所で光をあて、4~5mmの丈夫な黒紫色の芽を育てます。

芋が重ならないように広げ、一週間おきに上下をひっくり返し、芋に光がまんべんなくあたるようにします。

4~5mmの丈夫な黒紫色の芽

畑の準備

ジャガイモの畝

ジャガイモは連作を嫌います。3~4年はジャガイモを含むナス科(トマト、ピーマン、ナスなど)の野菜を育てていない場所を選びます。

また、ジャガイモはpH5.0~5.5の弱酸性の土壌を好み、石灰を入れて土壌がアルカリ性に傾くと、芋の表皮がざらざらになる「そうか病」が発生しやすくなります。強い酸性の土壌でなければ、石灰を入れる必要はありません。

種芋を植える1週間前に、畑に堆肥と化成肥料を入れて良く耕し、畝を高めに立て、黒マルチを張ります。

黒マルチを使うと、雑草を抑制し、地温を上げて収穫を早めることができます。

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大きい種芋は切って植える

小ぶりの種芋ならそのまま植え、それ以上ならば切って植えます。

30g~60g(小ぶり):切らずにそのまま植える
60g~100g(通常の大きさ):縦に半分に切って植える。
100g~150g(大きい):縦に三つに切って植える。
150g~200g(非常に大きい):縦に四つに切って植える。

種芋を切るとき、芽の多い部分が両方に均等に分かれるように、芋を縦に切り分けます。

種芋を切った後の処理にはいくつか方法がありますが、切り口を乾かす(2~3日陰干し)程度で十分です。

また、切り口を乾かさずにそのまま埋めてもあまり腐敗しませんが、一般的に草木灰を塗布して腐敗を防ぎます。


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種芋は縦に切ろう

種芋が大きくて切って植える場合は、縦に切りましょう。

親芋とつながっていたへそ(くぼんだ部分)の周りには芽が出にくく、その反対側の先の方に芽が多く出るため、種芋を縦に半分に切れば、芽が均等に出ます。

横に切ってしまうと、先の方に芽が集中してしまい、へその方には芽が出なくなってしまいます。

3つや4つに切る場合も同様に、縦に切りましょう。

種芋を植える

植えたジャガイモの種芋

準備した畝に、2列で30~40cmの間隔で種芋を植えます。

植え方は、深さ7cmほどの植え穴を掘り、種芋の芽を上(切り口が下)にして置き、土を被せて軽く押さえます。

[植えつけ手順]

  1. 2列、30~40cmの間隔でマルチに穴をあける。
  2. 深さ7cmほどの植え穴を掘る。
  3. 種芋の切り口を下側にして穴に置く。
  4. 掘り出した土を穴に戻す。
  5. 軽く押さえる。

ジャガイモの植えつけ間隔

種芋をたくさん植えるのに便利な道具

ホーラーのH70P

ジャガイモの種芋をたくさん植えるとき、ホーラーのH70Pがあると便利です。

H70Pは、立ったまま楽に種芋を植えることができる道具で、同じ深さで、しかも簡単に、短時間にたくさん植えることができます。

ジャガイモや里芋の植えつけにホーラーのH70Pが便利

遅霜対策

ジャガイモは霜に弱く、出芽(地上に芽が出る)してから霜にあたると葉や茎が枯れます。

枯れても再生しますが、生育が遅れ、収穫に大きく影響してしまいます。

霜の予報が出たら、土を寄せて芽を埋めるか、寒冷紗やビニールでトンネルして防ぎます。

芽かき

ジャガイモの芽

ジャガイモは、面積当たりの収穫量がおおよそ決まっています。

一つの種芋から5~6本の芽が出てきます。

すべての芽を成長させると、小さい芋ばかりになってしまいます。

残す茎が少ないほどに大きい芋がとれます。

茎が少ない:大きい芋がとれるが数が少ない
茎が多い:小さな芋がたくさんとれる

大きい芋をとりたければ1~2本を残し、小~中の芋をたくさんとりたければ3~4本を残します。

一般的には、茎の丈が10cmほどに伸びたころに、太くて丈夫な茎を2~4本だけ残して、ほかの茎をかきとります。

このとき、残す茎が抜けてしまわないように株元を押さえ、かきとる茎を倒しぎみにして引き抜きます。

不用意に引き抜くと、種芋ごと抜けてしまうことがあるので、注意して作業しましょう。

[芽かきの手順]

  1. 太くて丈夫な茎を2~4本選ぶ。
  2. 残す茎の株元を手のひらで押さえる。
  3. かきとる茎を引き抜く。

ジャガイモの芽かき

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ジャガイモの「芽かき」の理由とやり方

芽かきをしないと小さい芋ばかりになるので、芽かきは大切な作業の一つです。

追肥

芽かきをした後、化成肥料を株元に施します。

ジャガイモの花

ジャガイモの花

うずらの卵大の花が咲き乱れます。

白やピンクの美しい花は、昔は観賞用にも用いられていました。

試し掘り

茎や葉が黄色く枯れてきたジャガイモ

茎や葉が黄色く枯れてきたら、株元を丁寧に掘り、芋の大きさを確認します。

芋が小さいときは、また土をかけておき、芋が育っているようなら、1株掘って芋の状態を見ましょう。

ジャガイモの試し掘り

収穫

ジャガイモの収穫適期

試し掘りをして芋が育っていたら、天気のよい日に収穫します。

茎をすべて刈り取ってマルチを剥がし、株から少しはなれたところにスコップや備中グワ(三又)を入れて株を下から持ち上げるように掘り起こします。

2~3時間畑で乾かしてから、日の当たらない風通しのよいところで保存します。

収穫したジャガイモ

ナス科の野菜が近くにあったら早めに収穫

ジャガイモは気温が上がりはじめると病気にかかりやすくなります。

トマト、ナス、ピーマンなどのナス科の野菜が近くにある場合は、病気の感染を防ぐため、枯れきる前に早めに収穫しましょう。

病害虫

ジャガイモは南米のアンデス山脈が原産で、乾燥した冷涼な気候を好み、暑さや湿気が苦手で、6月~7月の気温が高くなる時期に病害虫が発生しやすくなります。

連作を嫌うので、3~4年はジャガイモを含むナス科(トマト、ピーマン、ナスなど)の野菜を育てていない場所を選びます。

pH5.0~5.5の弱酸性の土壌を好み、アルカリ性に傾くと、芋の表皮がざらざらになる「そうか病」が発生しやすくなります。

連作を避け、、種芋から伝染する病害が多いので、ならず専用(ウイルスフリー)の芋を使用し、石灰の入れすぎに注意しましょう。

もし、病気の兆候がみられる株を見つけたら、すぐに抜き取り、畑の外で処分しましょう。

また、ナス科のジャガイモには、ウイルスを媒介するアブラムシや、葉を食害するニジュウヤホシテントウ(別名テントウムシダマシ)などが発生しやすいです。

株が小さいうちは、害虫を見つけたらできるだけ早めにとり除きましょう。

収穫したジャガイモの保存方法

ジャガイモは収穫後、1週間ほど風通しのよい日陰に並べてよく乾かします。

表面が湿っていると、腐ったりカビが出たりするので、しっかり乾かします。

光があたらないように、段ボールや紙袋などに入れて、風通しのよい暗い場所に置いて保存します。

傷のある芋は腐りやすいので、保存せずに早めに食べましょう。

食用のジャガイモを種芋にできる?

スーパーなどで食用に売られているジャガイモや、自分で栽培して収穫したジャガイモは、ウイルスに感染している可能性があります。

食べる分には問題ありませんが、種芋から伝染する病害が多いので、かならず種芋用のウイルスフリーの芋を植えつけましょう。

テントウムシダマシに注意

テントウムシダマシ

ニジュウヤホシテントウ、別名をテントウムシダマシといい、益虫のテントウムシに似ていますが、背中の星の数が多い害虫のテントウムシです。

幼虫も成虫も葉をひどく食害し、丸坊主になってしまうこともあります。

この虫は、ジャガイモからナス、キュウリへと移ることが多いので、見つけしだい駆除しましょう。

芋の表面のかさぶた

ジャガイモの表面に褐色のかさぶたのような斑点ができるのは、そうか病というカビの一種が原因の病気です。

皮を厚くむけば食べられますが、見た目がよくありません。

そうか病を防ぐには、連作を避け、土壌がアルカリ性に傾くと発生しやすいので、石灰の入れすぎに注意します。

そうか病が多発する土壌では、種芋を植える前にフロンサイド粉剤を散布すると効果的です。



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収穫したジャガイモを切ったら中が空洞に

肥料分が多いと大きいイモがとれますが、中が空洞になりやすくなります。

中が空洞になると病気にもなりやすくなります。

残肥が多い場所では無肥料で植えつけます。

疫病に注意

ジャガイモの栽培でとくに気をつけなくてはならないのは、同じナス科のトマトやナスにも発生する疫病です。

疫病はカビによる病気で、葉や茎などで発病し、急速に畑全体に広がり、株がとろけたように腐ってしまう恐ろしい病気です。

疫病に強い品種を選び、できれば薬剤を使用して予防に努め、発病した場合は早期に株を抜いて畑の外で処分しましょう。

トンネル栽培で早く収穫

ビニールでトンネル

早く収穫したい場合は、ビニールで保温して育てます。

2月中旬に種芋を植え、ビニールでトンネルし、トンネルの上部に茎がつき、遅霜の心配がなくなったらビニールを取り外します。

花は摘み取るべき?

ジャガイモの花

ジャガイモの花は、摘み取るとその分の栄養が芋に回るため、収量が若干良くなるといわれています。

ただ、摘み取っても収量にさほど差はありませんし、ジャガイモの花は昔は観賞用に用いられたほどに美しいものなので、そのまま咲かせておいてもかまいません。

ジャガイモの実は食べられる?

ジャガイモの実

ジャガイモにはミニトマトのような実がなりますが、ソラニンという有毒な成分が含まれ、食べると嘔吐や下痢を引き起こすので、食べないようにしましょう。

なお、この実は品種によってなりにくかったり、なりやすかったりします。

リンゴと一緒に保存すると発芽抑制

ジャガイモの発芽を防ぐには、リンゴと一緒に保存しましょう。

リンゴが出すエチレンの作用により、ジャガイモの芽の成長が抑えられ、保存期間が長くなります。

ジャガイモの芽には毒がある?

緑色のジャガイモ

ジャガイモの芽や、日に当たって緑色に変色した芋には、ソラニンという有毒物質が多く含まれています。

大量に摂ると吐き気、下痢、おう吐、腹痛などを引き起こし、重症化する場合もあります。

芽や変色した部分はすべて取り除き、緑化した皮は厚くむいてから使いましょう。

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