スイカはウリ科の1年草で、原産はアフリカのカラハリ砂漠とする説が有力です。
夏に欠かせない野菜のひとつで、スイカを食べないと夏という感じがしないほどです。
冷やしたスイカは暑い夏ほどおいしさも倍増するもので、日照りが続き、猛暑が続くほどおいしいものができます。
現在はハウス栽培もされて1年中出回っていますが、夏に露地でつくって食べてこそ、その効果が発揮されるものです。
小玉スイカは、1.5~2kgで冷蔵庫に丸のまま入ることから、家族の少人数化などによって人気が高まってきています。
収穫の醍醐味や、実がみるみる大きくなる姿を見る楽しさ考えると、1株だけでもつくってみたくなります。
うまくできたかどうか包丁を入れる瞬間の緊張感は、スイカを栽培した人だけの特権です。
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プランターで小玉スイカを育てよう
小玉スイカの育て方
スイカは、大玉、中玉、小玉などさまざまな大きさの品種があります。
家庭菜園では、小型で多くの実がつく小玉スイカが、育てやすくておすすめです。
4月下旬~5月中旬に接ぎ木苗を畑に植えつけ、8~9月に収穫するのが一般的です。
生育適温は25~30℃の高温性で、高温と乾燥を好み、夏の日照りが多く、猛暑が続くほどおいしい実ができます。
逆に、雨が長く続いたり、温度が低かったりすると、実のつきが悪くなります。
連作を極端に嫌うので、5~6年は同じところで作らないようにしっかり計画を立てましょう。
ただし、接ぎ木苗なら連作をすることができます。
概要
生育温度 | 25~30℃。 | ||||
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土壌酸度 | 5.5~6.8。 | ||||
連作障害 | 自根の場合はあり。5~6年以上あける。 | ||||
育てやすい品種 | 紅しずく、紅こだま、カメハメハなど。 | ||||
元肥 | 苦土石灰と元肥を入れ、元肥は控えめにする。 | ||||
苗の植える時期 | 4月下旬~5月中旬。 | ||||
苗の植え方 |
畝幅:90cm。 黒マルチ:有効。 株間:1列、250cm間隔。 |
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栽培中の管理 |
害虫対策:防虫ネットでトンネルした方が安心。 保温:苗を植えたら株ごとにホットキャップをかぶせて保温する。 摘芯:蔓が伸びはじめたころ、親蔓の先端を摘み取る。 整枝:生育のよい子蔓を3~4本残し、ほかの子蔓は摘み取る。 人工授粉:防虫ネットでトンネルしてる場合は人工授粉を行う。 追肥1回目:最初の実がピンポン玉の大きさになったころ。 追肥2回目:2番果が2個以上着果して少し大きくなってきたころ。 摘果:1本の子蔓に2個の実を残し、余分な実は小さいうちに摘み取る。 玉返し:実の上下をひっくり返す。 |
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収穫 | 受粉からおおよそ35日。もしくは、実のついた節から出た巻きひげが枯れたら。 | ||||
病害虫 |
主な病気:疫病、褐色腐敗病、菌核病、炭そ病、つる割病、緑斑モザイク病など。 主な害虫:アブラムシ、ウリハムシ、ダニ、アザミウマなど。 |
ポイント
- 連作を極端に嫌うため、連作障害のでにくい接ぎ木苗を使用する。
- 苗の植えつけは、十分に暖かくなってから行う。
- 蔓ボケを防ぐため、元肥は控え目にする。
- 深植えにせず、台木を出して植える。
- 実つきをよくするため、摘芯と芽かきをするとよい。
- 肥料切れを起こさないように追肥する。
- 開花日を記録しておく。
ポイントを動画で解説
- ウリハムシ対策
- 台座を敷く意味
- 収穫の目安
栽培中のスイカで育て方のポイントを解説してます。
時期
※品種や地域によって栽培時期は異なります。事前に確認してください。
苗が売り切れる前に購入しておき、家で水をやりながら管理し、十分に暖かくなってから畑に植えます。
育てやすい品種
紅しずく、紅こだま、カメハメハなど。
黄肉の品種もありますが、やや淡白な風味のため、最近は人気が落ちています。
適した肥料(元肥・追肥)
小玉スイカは実を収穫する野菜のため、花や実の成長に必要なリン酸を多くし、葉や根の成長に必要な窒素やカリは控えめにします。
とくに窒素が多いと、葉ばかりが繁って実がつかない「つるボケ」を起こすため、与えすぎに注意します。
ほかに小玉スイカの成長に欠かせないマンガンやホウ素などの微量要素も配合された肥料が最適です。
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畑の準備
小玉スイカは自根だと連作を極端に嫌います。スイカを5~6年以上育てていない場所を選びます。連作障害対策としては、接ぎ木苗を使います。
また、多肥を好むと思われがちですが、元肥が多すぎると蔓ボケして失敗するため、前作の肥料を考えて加減します。
苗を植える2週間前に、苦土石灰を畝を立てる場所全面にまいてよく耕し、植える1週間前に、堆肥と化成肥料を控えめにまいてよく耕して混ぜ込み、畝を立てて黒マルチを張ります。
黒マルチは、雑草の抑制や、地温を上げる効果に期待できます。
苗の用意
小玉スイカは自根のほうが美味しいといわれていますが、連作を極端に嫌い、つる割病などの病害が発生しやすいため、連作障害を避けるために接ぎ木苗をおすすめします。
[小玉スイカのよい苗]
- 本葉が5~6枚ついている
- 双葉がきれいにそろっている
- 節間が短く、茎が太い
- 葉に厚みがある
- 病気や害虫による被害がない
苗を植える
苗の植えつけは、十分に暖かくなってから行います。
苗を用意できたら、植える前にポットにたっぷり水をやり(ポットごと水につけてもよい)、たっぷり水を含ませておきます。
あらかじめ準備しておいた畝に、1列で間隔を250cmとし、マルチに穴をあけ、ポットの大きさほどの植え穴を堀ります。
根鉢をくずさないように注意してポットから苗を取り出し、浅く植え、株元を軽く押さえます。
植えつけ後、たっぷり水をやります。
接ぎ木苗は、接いだ部分が土に埋まらないように注意しましょう。
ウリハムシに注意
小玉スイカにはウリハムシがよく発生し、生育初期に食害されると著しく生育が阻害されます。
害虫対策のため、苗を植えたらすぐに防虫ネットでトンネルします。
ただし、小玉スイカは雄花と雌花が別々に咲くため授粉が必要で、ミツバチなどによって自然に受粉しますが、防虫ネットによって阻害されるため、人工授粉が必要です。
ホットキャップで保温
小玉スイカは高温性の野菜なので、寒さを防ぐために、苗を植えたら株ごとにホットキャップをかぶせて保温すると生育がよくなります。
天井に蔓が届き、キャップいっぱいに葉が茂って込み合ってきたら、キャップを取り外します。
摘芯(てきしん)
スイカの雌花の多くは子蔓や孫蔓につくので、本葉5~6枚になって蔓が伸びはじめたころ、親蔓の先端を摘み取ります。
この作業を摘芯といって、親蔓を摘み取って芯を止めることにより、子蔓の発生や生育が促されます。
蔓の伸ばし方
摘芯して脇芽の子蔓が伸びてきたら、生育のよい子蔓を3~4本残し、ほかの子蔓は摘み取ります。
残した子蔓は、互いに絡まないように四方へと広げ、蔓が風で動かないようにUピンなどで挟んで畝に固定します。
子蔓から出てくる孫蔓は放任します。
人工授粉
基本的には人工授粉の必要がありませんが、ウリハムシ対策に防虫ネットでトンネルしていると、受粉されません。
また、雨が続いたり、株の生育が思わしくないときは、花粉が出にくくなり、受粉しにくくなります。
そこで、人工授粉といって、人の手によって受粉を行い、確実に着果させます。
がくの下が膨らんでいるのが雌花、膨らみがないのが雄花です。
雄花をとって花弁(かべん)を取り去り、雌花の花柱(かちゅう)(雌しべの先)に雄花の雄しべをつけて花粉をつけます。
作業は午前中の早めに行いましょう。
そのときに、人工授粉した日付を記したラベルをはっておくと、収穫適期の判断になります。
追肥(1回目)
最初の実(1番果)がピンポン玉の大きさになったころ、化成肥料を控えめに施します。
畝の片側に深さ5~10cmほどの溝を掘り、化成肥料をまいて埋め戻します。
摘果
実がたくさんついてきたら、1本の子蔓に2個の実を残し、余分な実は小さいうちに摘み取ります。
それぞれの子蔓に2個ずつ、1株で6~8個の収穫を目指します。
追肥(2回目)
2番果が2個以上着果して少し大きくなってきたら、1回目と同様に化成肥料で追肥します。
トンネルを外す
株が大きくなれば、ウリハムシによる食害に耐えられるので、トンネルの中が混み合ってきたら、トンネルを外して風通しをよくします。
玉返し
地面に接している部分が緑色にならず着色不良になってしまうため、上下をひっくり返して地面に接していた部分に色をつけます。
この作業を玉返しといって、収穫までに4~5回行います。
または、玉返しの代わりにマットを使用します。
マットを実の下に敷くことで、太陽の光が下の部分に反射して着色不良が解消され、地面に実が触れないので、病気の予防にもなります。
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収穫
スイカは収穫適期の幅が狭く、収穫のタイミングを判断するのが難しい野菜です。
表面を軽く叩いて音が濁らなければ収穫適期ですが、慣れないと判断が難しいものです。
そこで、それぞれの実の花が咲いた日や受粉した日を記録して、開花からの日数で判断するのがおすすめです。
受粉してから熟すまでの日数は品種によって決まっています。小玉スイカは受粉からおおよそ35日が目安ですが、苗のラベルやカタログなどを見て確認しておきましょう。
ただし、実が肥大してから見つけることもあります。その場合は次のポイントをチェックして、収穫適期を見極めてください。
- 実の表面を軽く叩いて「ポンポン」と音が通る(濁らない)
- 実のついた節から出た巻きひげが枯れている
- 実のついた節の葉が枯れたら
- 日の当たらない底が黄色に変色している
ヘタをハサミなどで切って収穫します。
病害虫
つる割病が出やすいので、抵抗性のある台木の接ぎ木苗を使用します。
梅雨時には炭そ病やつる枝病が発生しやすいので、水はけや風通しをよくして対策します。
乾燥しすぎるとうどんこ病が出るので、黒マルチや敷きわらを必ずして保湿します。
それでもつる割病などが発生したときは、株を早く抜き取り、畑の外で処分しましょう。
害虫では、アブラムシ、ウリハムシ、ハダニ、アザミウマなどが発生します。
ウリハムシは防虫ネットでトンネルして防除し、アブラムシやハダニは発生初期に薬剤を散布します。
空中栽培
家庭菜園の狭いスペースでは、支柱に張ったネットに蔓を誘引して育てる空中栽培を試してみるのも面白いです。
風通しがよく、茎や葉が地面に接しないので、泥跳ねなどによる病気の発生の軽減になります。
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小玉スイカの空中栽培|省スペースで育てられる面白い育て方
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小玉スイカはネギとの相性がよく、小玉スイカの苗を植えるとき、ネギ2本を添えて一緒に植えると、ネギの根に共生する微生物が繁殖して小玉スイカに病原菌がつくのを防ぎ、ウリハムシを忌避する効果もあります。
1番果はとるべき?
7~10節についた1番果は株がじゅうぶんに育つ前にでき、形が変形したり、中が空洞になるなど、よい実にならないので、とってしまうのが一般的です。
しかし、家庭菜園ではあまり気にすることもないので、とらずに残してもかまいません。
台木から葉が出てきたら
スイカの株元から違う植物の葉が出てくることがあります。
これは、接ぎ木苗の台木に使われている植物から芽が伸び出したものです。
台木から出る芽の勢いのほうが穂木(小玉スイカ)より強いので、見つけしだいつけ根から取り除きます。
カラスに注意
実が大きくなるとカラスなどにつつかれることがあります。
ウリハムシ対策に防虫ネットでトンネルしていれば問題ありませんが、なにも対策していないとカラスに食べられてしまうことがあります。
そこで、防虫ネットでトンネルしていない場合は、防虫ネットをべた掛けするか、防鳥ネットをかけて対策します。
種から育てるには
スイカは連作を極端に嫌うので、接ぎ木苗を使うのが普通ですが、畝にじかまきして育てることもできます。
ただし、種から育てた場合は、5~6年は同じところで作らないようにしましょう。
時間とともに糖度が減る
小玉スイカは、収穫したときがもっとも糖度が高く、追熟はしません。
時間とともに糖度は減少していくので、収穫したら早めに食べましょう。
追熟はできない
小玉スイカは収穫した時点で成長が止まるため、追熟はできません。
収穫が早すぎるとおいしくないので、開花からの日数や、巻きひげの状態などから収穫適期を判断し、それでも心配なら、収穫を一週間遅らせてみましょう。
風通しのよいところで保存
収穫した実は、丸ごとの場合は2週間ほど保存できます。
その場合、風通しのよい場所で常温で保存します。
冷凍保存
皮と種を取り除いた実を2~3cm角に切って、冷凍庫で凍らせて保存します。
約2カ月ほど保存できます。
種も食べられる
小玉スイカの黒い種にも栄養がたくさん含まれていて、ビタミンEやリノール酸、タンパク質などが含まれています。
洗って乾かし、フライパンで軽く煎って皮をむいて食べます。
中国ではお茶菓子として食べる習慣があります。
皮も食べられる
果肉よりも皮にカリウムとシトルリンが多く含まれています。
外側の硬い薄皮をむくと、漬物や酢のもの、煮物などに使えます。
スイカ糖
さらに利尿作用を高めるには、スイカ糖がおすすめです。
果肉を鍋に入れて煮詰め、固形がなくなったらこして、さらに水あめ状になるまで煮詰めます。
瓶詰にすれば、冷蔵庫で2~3年は保存できます。
1日大さじ1杯なめると、風邪の引き始めで喉が痛いときや、咳が出るときにも効果的です。