縁起のいい夢「一富士、二鷹、三茄子」ということわざに登場するナス。
ナスの原産地はインドで、日本へは奈良時代に中国から伝わりました。
奈良時代の東大寺正倉院の古文書にナスの名前があり、日本最古の農書である江戸時代の農業全書にもナスについて記されています。
日本では1200年もの長い歴史がある重要な野菜で、江戸時代から色も形もさまざまに変化し、地方品種は170種以上にもなるといわれています。
熱帯では多年生ですが、日本では冬になると枯れてしまう1年生植物です。
暑さに強く、寒さに弱い野菜で、低温期に出回るものは、ハウスで栽培されています。
栽培の歴史が古く、地方の風土に合った個性的な在来品種が多く存在します。
茄子紺という言葉があり、ナスといえば黒紫色ですが、緑、白、黄のものもあります。
形では、丸、小丸、卵、中長、大長があります。
関東では卵形が好まれますが、西日本では長ナスや大長ナスが多く、丸ナスは新潟や京都などの一部の地域で作られています。
そのほかには、ヘタが緑色で大型の米ナスなどもあります。
漢方では体を冷やす野菜として、鎮痛や消炎のために使われます。
成分は、水分が約93%を占め、食物繊維やカリウムなどを含みますが、栄養価の低い野菜です。
ナスの特徴であるつややかな黒紫色は、ナスニンというアントシアニン系色素によるもので、ポリフェノールの一種です。
ナスニンは抗酸化作用があるため、活性酸素の働きを抑制し、動脈硬化や老化防止などの効果に期待できます。
切り口が褐色色に変化するのは、ポリフェノールの酸化作用によるものです。
ナス自体には強い個性はなく淡白な味ですが、生でも加熱でも、どんな調理法でもおいしく味わえます。
ナスが油と相性がいいのは、スポンジのような果肉が油をよく吸収し、やわらかくなるからです。
秋になると皮がやわらかく、実が締まっておいしくなります。
「秋ナスは嫁に食わすな」ということわざがありますが、この理由には諸説あり、「秋ナスはおいしいから嫁に食べさせたらもったいない」という意ではなく、「秋ナスは体を冷やすから妊婦にはよくない」という意が有力です。