3.11の東日本大震災は、日本中を震撼させる巨大地震でした。
そこで起きた福島原子力発電所の爆発は、関東一帯の人に恐怖をもたらしました。
とくに、北関東付近に暮らしている人にとっては、放射能のことがよくわからないこともあって、恐怖心がつのったことだろうと思います。
実際に、沖縄に逃げた人、大阪に逃げた人などが数多くいらっしゃいます。
それらを責めるつもりはありません。
放射能は、とくに小さいお子さんがいれば、恐怖そのものです。
そして、家庭菜園をしている人にとっては、より深刻でしょう。
事故が起こった2011年は、家庭菜園を控えた、と言う人が多いのではないでしょうか。
ですが、翌年である2012年から家庭菜園を再開した人も多いのです。
ここでは、とくに、「安全」を押し付けるつもりはありませんが、冷静に考えて、家庭菜園と放射性物質の関係を見ていきましょう。
関東近辺、とくに北関東や福島県で、安全に家庭菜園を行うにはどうすればいいのでしょうか。
結論からいうと、福島などの一部の地域では、土の表面に放射性物質が降り注いでいる可能性がありますので、地中深く掘り返すことで、放射性物質を取り除くことができます。
また、その野菜が、根や葉からどれほど放射性物質を吸収するかは、その野菜に依存します。
今後、もう二度とあのような事故は起こってほしくないため、現在は原発が止められています。
ですが、地震大国の日本で、またいつ原発が再稼働するかはわかりません。
知識として、放射性物質と家庭菜園の関係について知っておくことは、とても大切だといえるでしょう。
まずは放射性物質の種類を知ろう
まずは、敵を知らないことには対策をとりようありません。
放射性物質で問題となっているのは、放射性ヨウ素、放射性セシウム、放射性ストロンチウムの3つです。
放射性ヨウ素は、半減期が8日しかないため、短いので、まったくといっていいほど影響がありません。
放射性ストロンチウムも、ほとんど放射されていないため、文科省の調査によっても放出量が極めて微量のため、あまり考えなくとも良いでしょう。
問題は、放射性セシウムです。
放射性セシウムは、空から降り注いだ場合、植物は放射性セシウムを吸収してしまいます。
ですが、野菜の場合は、根から吸収することはほとんどできません。
また、吸収することがあったとしても、品種によって数値が異なるのが現状です。
土に放射性セシウムがばらまかれた場合は別ですが、空気中の放射性セシウムを野菜が高濃度に吸収してしまう可能性があります。
葉や根に付着した放射性セシウムのことを簡単に野菜は吸収してしまうので、原発事故があったら、今行っている葉や根のある野菜の収穫は難しいといえるでしょう。
土の上に放射性セシウムが落ちた場合は、土の中の粘土鉱物に吸収されて、溶け出さなくなるので、まだ空気中や空から降り注ぐよりは、地面に落ちたほうがマシだといえます。
これはよく覚えておきましょう。
根から吸収されることがほとんどないため、ジャガイモや人参などの野菜は、栽培できる可能性が高まります。
ほうれん草やブロッコリーなどは注意が必要
原発事故があった直後、ほうれん草やブロッコリーなどに、基準値を超える放射性物資が検出されました。
これは、葉っぱのような形式になる野菜だからだと考えられます。
ですが、事故が3月で、6月以降の震災が起こった後に植え付けられた野菜では、ほとんどすべての福島産の野菜が、基準値以下になっています。
ほうれん草やブロッコリーが危ないとはいっても、それはあくまで、育てている最中に原発が爆発し、放射性セシウムが降り注いだ場合です。
野菜の中では、キュウリやトマトに比べて、ナスやピーマンなどは、地中の放射性物質を吸収しづらいといえるでしょう。
コメなども、放射性物質が一部検出されました。
ですがこれは、木の葉に付着した放射性セシウムが、水田に流れ込んで稲に吸収されてしまったからです。
地表付近に溜まりやすい
近隣で放射性セシウムが撒き散らされた場合ですが、地表付近に堆積しやすいので注意が必要です。
地中深くにはそれほどたまりませんので、植えるときは土を掘り起こして、深く耕しましょう。
そうすることによって、放射性物質から野菜の種・苗を守ることができます。
放射性物質の果物関係への影響を考える
では、地中深く根をはる果物への影響はどのようなものでしょうか。
放射性セシウムは地表にたまりやすいといいましたが、果物は根っこが地中深く根をはっています。
あまり土の中に入り込まないので、根から吸収されることはあまりないと考えて差し支えないでしょう。
ですが、果物は樹皮に吸着されると、非常にやっかいです。
果物の場合は、植え替えるわけにもいかないので、高い濃度で放射性物質が検出されることが多いのです。
とくに、放射性セシウムでは注意が必要です。
果物の場合、柑橘類やびわ類に注意
柑橘類やびわ類の場合は、葉から非常に放射性セシウムを吸収しやすく、注意が必要でした。
ですが、現在はもう放射性セシウムは降り注いでいませんので、今の福島産の柑橘類やびわ類を恐れる必要はありません。
あくまで、今後、原発事故がふたたび起こった場合を想定しています。
リンゴやももなどの、樹皮の表面がつるつるの場合は、雨で放射性物質が流れ落ちるので、それほど心配はありません。
ですが、逆に樹皮の表面がザラザラのもの、たとえば、栗、柿などは注意が必要となります。
樹皮をカットすることで、線量が大きく減少
福島県の果樹園では、樹木は動かせないため、表面の樹皮をはぎとることで、線量を低くするという試みがなされています。
それによって、大きく線量が減少することが知られています。
水分が多い野菜・果物は、濃度が低くなりがち
野菜や果物の中でも、水分が多いものは、相対的に見て、放射性物質の濃度が薄くなるので、低い値が検出されがちです。
反対に、水分が少ない野菜や果物は、たとえば栗などは水分が非常に少ないため、濃度が高くなりがちです。
たとえば、柿は、干し柿にすると放射性物質の濃度が高くなってしまいます。
ですが、品種ごとにこれも異なります。
野菜と家庭菜園と放射性物質の関係は、未だに研究が続けられています。
数値などが徐々に明らかになるに従って、より安全な野菜や果物はどのようなものか、わかってくるようになるでしょう。
また、濃度などの計算もしやすくなります。
野菜や果物の内部に蓄積された放射性セシウムが非常に問題ですが、それらを少なくするための技術も進んでいます。
データを蓄積することによって、検証されていくものと考えられます。
怖い原発の爆発、家庭菜園は安全に
現在では、出荷されている福島産の野菜や果物、コメを恐れる必要はありません。
ですが、放射能は決して縁遠いものではないのです。
原発は日本各地にあり、いつ再稼働するかはわかりません。
知識を正しくしって、正しく放射能を恐れましょう。
また、原発の爆発が起きたときは、野菜や果物に大きな影響がありますが、努力によって放射性セシウムを減らすことができます。
安全に、家庭菜園をスタートするには、地面を深く耕して、土を掘り返しましょう。
土の中までは放射性セシウムは染み込んでいきにくいからです。
(文/渡邉ハム太郎)