家庭菜園コラム

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最先端の都市型農業フランス発Agricoolが無農薬野菜の世界を変える?

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ヨーロッパの人たちはエコ意識が高いといいます。

特にドイツではその傾向が顕著で、野菜や果物といった口にするものを無農薬でつくったものにこだわりますし、また、生産の際に使われるエネルギーがエコであるか、といったところまで気にかけます。

それはそれで、価値観の問題や社会に対してどう責任を果たしていくか、エコや地球、グローバル世界に対して、ヨーロッパの国々がどう考えているか、ということに左右され、また日本とは考え方が違うのでしょうが、意識が高く進んでいることは確かではないでしょうか。

そんなヨーロッパで起業されたAgircool

Agricoolという会社は、そんな気風のあるヨーロッパで生まれた会社です。

エコ意識。

高いその志をベースに、Agricoolはコンテナで野菜を育てる都市型農業の会社としてスタートしました。

本社はパリ・フランスにある小さな会社です。

農薬を使わず、再生可能エネルギーを使っていることが特徴で、いかにもヨーロッパの国らしい志のある会社ではないでしょうか。

また、水もほとんど使いません。

エネルギーを循環させ、そして閉じた回路のなかで動作します。

メディアでも注目されており、2015年に起業して以来、1200万ユーロ(16億円)を調達しています。

これらはICOや資金調達というよりは、募金をベースにしており、どれだけ注目が集まっているかわかるでしょう。

起業した人のふたりは、農家の息子です。

そうしたストーリー性も、今の時代にマッチしていますね。

たとえば日本で農業のアグリビジネスを新たに興そうと思ったら、規制にその前を阻まれることがあるのではないでしょうか。

JAなどからお金を借りて、農林水産省の動向を見ながら、慎重に起業しなくてはならないでしょう。

しかし、今やインターネットの時代です。

Web時代が進んで、クラウドファンディングなどのさまざまな資金調達ができるようになりました。

これまでは大口や法人、機構や国からお金を調達していたものが、マーケット、つまり市場から調達できるようになったのです。

個人から認められ、支援されることで、ビジネスを加速させることができるようになったのです。

日本以外の規制が撤廃されつつある国では、個人から資金を集めて農業ビジネスを行うことが容易な時代になりつつあります。

そして、農業ビジネスで良い野菜、おいしい野菜をより多くの人に届けていくには、ビジネスはより公益性の高いものに近づいていくでしょう。

社会性、公益性が高い農業。

自分たちの利益を追求し、株主に還元していった資本主義の時代から、社会的に認められることを重視する価値主義の時代へ。

農業も例外ではなく時代が移り変わりつつあるのではないでしょうか。

しかし時代は変わっても、人は野菜を食べなくては生きていけませんので、農業の需要はなくなることがありません。

そして、人々の生活レベルが向上するとともに、無農薬の野菜を食べたい、より栄養価が高くておいしい野菜を食べたいというニーズも高まります。

実際には、無農薬野菜を、売れる量ほど作るのはとても困難です。

虫取りやメンテナンスが欠かせませんし、とても手間がかかります。

しかしアグリクールはそれをコンテナ型にすることで克服しようとしています。

資金は大規模に集まりつつあるものの、まだまだビジネス展開は小規模ですが、徐々にスケールアップをしようとしています。

1200万ユーロものお金が集まったということは、それだけ期待している人が多く、フランスには無農薬野菜のニーズが高いということではないでしょうか。

なぜヨーロッパではそんなに無農薬野菜が好まれるの?

日本でも子育て中のお母さんやロハス志向の方々など、無農薬野菜を積極的に食べたがる人はいらっしゃいます。

ではなぜヨーロッパではこれほどまで無農薬野菜が好まれるのでしょうか。

それは、おそらくですが1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故が関係していると考えられます。

旧ソビエト連邦のチェルノブイリで起きた原子力発電所の事故の影響は大きく、偏西風にのって汚染物質がロシアからヨーロッパまで運ばれ、ヨーロッパまで大パニックになったことがあります。

しかし今では、人がいなくなったチェルノブイリは野生の王国になっており、生き物たちの楽園と化していますので、このパニックは心理的なものが大きく影響しているものと考えられます。

もちろん、他にもヨーロッパの方々が健康志向でロハスな生活を好む理由はあるのではないでしょうか。

たとえば資本主義がかなり発展し、経済的に豊かになったので今度は生きることという根源的な欲望に忠実になりつつあること。

自然回帰志向といった流れがあるのかもしれませんね。

現在40名規模のAgicool、今後も発展の見通し

2017年の時点でAgricoolは40名のスタッフを抱えています。

2015年にコンテナをパリに設置してから3年、徐々にその数は増えつつあります。

スタートした時点では、フォーブス、TechCrunch、フィガロ、ル・モンドといったメディアがこぞってとりあげ、その注目度の高さを明らかにしました。

そして2016年には、最初は農家の息子がふたりでやっていたAgricoolから、最初の従業員を雇います。

そして1年後、人数が増え30人となり、さらにそこから40人と増えていったのです。

2016年の7月頃、オフィスを移動し、研究段階に入りました。

新しいオフィスは1500平米でとても広く、魅力的ですね。

こうしたスケールアップも、支援があってこそです。

400万ユーロ、800万ユーロの支援を次々取り付け、ビジネスの規模を拡大していきました。

コンテナの数も増え、Agircoolを取り上げたメディアによって注目を浴び、資金調達に何度も成功しています。

Agricoolのイチゴ、食べてみたい?

Agircoolはイチゴの栽培に力を入れています。

コンテナを使って都市部でイチゴを生産しているのです。

野菜や果物の無農薬栽培に特化したコンテナで、都市型ファームとしてプラントの空気の質、湿度、光、といった条件がそろっており理想的です。

都市の中で育てることができるので、輸送のコストを削減し、味に特化した栽培を続けることができるでしょう。

Agricoolのイチゴを食べてみたいものですね。

イチゴが成熟したらその場で摘み取られ、当日に配送されるので栄養価もばつぐん。

そして最終的には、イチゴだけでなくすべての人達が食べるすべての野菜について、農薬を使わずに栽培したいという大きな理想を掲げています。

そのための研究も欠かせず、研究開発を続けてきました。

まだまだ試食段階なのですが、大いに期待されており、Agicoolのコミュニティも拡大しつつあります。

ファンを作り、その人たち向けに販売し、よりマーケットを拡大していく。

それはつまり、この価値主義の時代になりつつある2018年こそ、求められているマーケットなのではないでしょうか。

非常に期待できますし、農業トレンドとしても注目です。

日本ではなかなかこういった動きが期待できませんが、海外では農業や野菜栽培についてアグリビジネスの新時代が始まりつつあります。

インターネットのビジネスでもアグリビジネスでも、今の時代に必要なのは同じです。

価値主義について考えてみるとともに、何ができるか身の回りを振り返ってみるといいのではないでしょうか。

野菜づくりが好きでたまらないのであれば、思い切ってアグリビジネスに着手するのも良いかもしれません。

(文/渡邉ハム太郎)

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