日本は雨が多く、土中のカルシウムが雨によって流されたり、酸性の化成肥料を多く施したりすることによって、土壌は酸性化してしまいます。
サツマイモ、ジャガイモなどは酸性土に強い野菜の代表ですが、一般に野菜は「やや酸性」の土壌を好みます。
野菜の多くは、pH6~6.5程度の「やや酸性」の土壌が生育に最適ですが、酸性に弱い野菜もあります。
ホウレンソウやインゲンは酸性土を特に嫌う野菜の代表です。
スギナ、ヨモギ、オオバコ、ハコベなどの雑草がよく茂っている土地は強い酸性土と考えて差し支えありません。
酸性土になると土の成分のアルミニウムが活性化してアルミニウムイオンになりやすく、根を痛めます。
また、リン酸と結合してリン酸アルミニウムとなって根がリン酸を吸収できず、リン酸欠乏症になる恐れがあります。
酸性を好む雑草が生えている土地では、酸度を改良しないと野菜は育たないのです。
土壌酸度の調べ方
土壌の酸度の測定は、市販の土壌酸度検査キットや土壌酸度計を利用するのが手軽でおすすめです。
[土壌酸度検査キット]
畑の四隅、地表から5~15cmくらいの部分の土を取ります。
土1に対して蒸留水2になるように容器に入れ、よく混ぜます。
沈殿するのを待って、上澄みに試験紙を浸し、比色表と比較します。
[土壌酸度計]
土壌に1分間差し込む。
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野菜の種類と酸度(pH)の関係
[中酸性(pH5.0~6.5)の土壌でよく育つもの]
サツマイモ、ジャガイモ、里芋、スイカ
[やや酸性(pH5.5~7.0)の土壌でよく育つもの]
小松菜、白菜、シュンギク
[弱酸性(pH5.5~6.5)の土壌でよく育つもの]
大根、人参、ヤマイモ、トウモロコシ、カボチャ、ナス、シロウリ、トマト、キュウリ
[酸性の土壌に弱いもの(pH6.5~8.0)]
ホウレンソウ、ネギ、タマネギ、インゲン
[酸性の土壌にやや弱いもの(pH6.0~7.5)]
エンドウ、レタス、キャベツ、ニラ、アスパラガス、セロリ、カリフラワー
雑草を見れば土壌酸度が分かる
土壌酸度は市販の土壌酸度検査キットを利用すれば調べられますが、畑に生えている雑草を見るだけでもある程度の土壌酸度が分かります。
[中性を好む雑草]
・ナズナ
・ホトケノザ
・オオイヌフグリ
[酸性を好む雑草]
・スギナ
・ヨモギ
・エノコログサ
土壌酸性改良剤
日本の土は概ね酸性ですが、土壌酸性改良剤には大きく分けて「速効性資材」と「緩効性資材」があります。
速効性資材は、生石灰(CaO)と消石灰(CaOH2)などで、水溶性でアルカリ性が強く、少量で酸性改良効果を示しますが、効果が持続しにくく、必要以上に与えると、マンガンやホウ素などの欠乏を招きます。
一方、緩効性資材は、炭カル(CaCO3)や苦土カル(CaCO3とMgCO3の混合物)などで、水に溶解しにくく、効果を出すまでにある程度の時間が必要ですが、土中に長く残存しているため、改良効果は持続します。
pHも急激には高まりません。
生石灰は水に触れると発熱し、消石灰になります。
反応が強いため、ベテラン向きといえます。
消石灰は生石灰に水を加えたもので、やはり反応が強いため、ベテラン向きです。
炭酸石灰(炭カル)は石灰石を粉末にしたもので、初心者にも扱いやすいものです。
苦土石灰は白雲石(ドロマイト)を含む石灰石を焼いた粉末で、これも初心者向きといえます。
土壌の酸性改良材としては、現在では主に苦土カルが使用されています。
これはカルシウム5:マグネシウム1の割合で混合されたものです。
pHを1上げるためには、苦土石灰なら1m2あたり1つかみ(100g)、消石灰なら1m2あたり半つかみ(50g)が目安となります。
そのほかの土壌改良剤としては貝化石やカキ殻の粉砕した物を有機石灰として使用したり、製鉄所の製鋼過程で生じる転炉クズなども使われています。
草木灰は石灰成分を含み、アルカリ性であるため、肥料としてだけでなく、土壌の酸性改良にも役立ちます。
ただし、硫安などのアンモニア肥料や過リン酸石灰と一緒に施すと、アンモニアがガスとなって逃げてしまうので、注意しましょう。
また、ジャガイモの種イモを植え付ける際に切り口にまぶすと、雑菌による腐敗防止に役立ちます。
石灰窒素は生石灰が含まれているため、酸性土壌の中和にも役立ちます。
土づくりの際に施すと、土中の病原菌の殺菌や雑草の防除になります。
過リン酸石灰、重過リン酸石灰は水溶性のリン酸質肥料です。
石灰を含みますが、アルカリ性ではありませんので、酸性改良材としては向きません。
苦土石灰は酸性土壌や関東ローム層など火山灰性の土壌に不足しているマグネシウム成分を含む肥料です。
マグネシウムは微量成分としてなくてはならないものです。
貝化石は貝殻を乾かしたものを焼いて粉末にしたもので、炭のような多孔質構造を持っており、ここに有益な放線菌や細菌の住処となるため、悪性の糸状菌を寄せつけません。
また、有害物質を吸着してその毒性を和らげます。
土壌に施すと、有益菌が増えやすい環境が作られます。
転炉クズは、主にケイ酸カルシウムを含み、マグネシウムやリン、マンガン、ホウ素なども含んでいますのでこれらの成分の欠乏を防止することができます。
土壌酸性改良剤の使い方
土壌の酸度を改良するには消石灰や苦土石灰を使います。
これを元肥を入れる1週間前までに畑に散布し耕しておきます。
雑草が生い茂っていた酸度の強い畑なら、1m2あたり3~5握りを目安に施すとよいでしょう。
堆肥の上に石灰をばらまき、一緒に耕すとさらに土壌が改良されます。
石灰の施しすぎに注意
石灰を大量にまいてしまうと、土壌のアルカリ性が強くなり、野菜の生育が悪くなります。
ジャガイモでは、そうか病が発生しやすくなってしまいます。
石灰をまきすぎてしまうと、元に戻すことは難しいので、土壌酸度を調べてから適量を施しましょう。
窒素肥料を同時に施さない
石灰と肥料(とくに窒素)を同時に施してはいけません。
石灰が持つアルカリ分によって窒素が分解され、アンモニアガスとなって大気中に出てしまい、肥料の効きが悪くなるためです。
めんどうに思うかもしれませんが、市販の土壌酸度検査キットを利用して土壌のpH(酸度)を測定し、pH6程度以下なら元肥を入れる1週間前までに苦土石灰を施してよく耕しておきましょう。