ホームセンターや園芸店に行くと、さまざまな種や苗が売られていて、あれもこれもと、つい衝動買いしてしまいがちですが、それが失敗の原因になることもあります。
というのは、野菜が思っていた以上に大きく育ってしまったり、後で調べてみたら栽培が難しかったり、栽培に適した時期から外れていたりすることがあるからです。
また、同じ畑で同じ科の野菜を続けて栽培すると、連作障害といって、病害虫が発生しやすくなります。
こういった失敗を避け、楽しい家庭菜園にするためには、あらかじめ菜園をいくつかのブロックに分け、育てる野菜をローテーションさせることが大切です。
そのためには、畑の条件、作りたい野菜の種まきや植えつけ時期、栽培難易度、生育期間をしっかり調べ、量や育てる場所などを考え、一年の栽培計画を立てます。
これを作付け計画といいます。
限られたスペースを有効に利用するには、作付け計画が必要です。
この計画は数年先まで影響してくるので、慎重に立てることが望ましいです。
ここでは作付け計画を立てるコツを、順を追って紹介していきます。
目次
栽培の難易度を知ろう
家庭菜園では、作りたい野菜を作ることができます。
しかし、野菜の栽培には簡単なものから難しいものまであります。
栽培が簡単なものは、栽培期間が短く、病害虫があまりなく、あまり手間もかからないものです。
たとえば、ホウレンソウやシュンギクなどは、栽培期間が短く、病害虫も少ないので栽培が簡単といえます。
栽培が難しいものは、病害虫の被害が多く、手間もかかるものです。
たとえば、白菜やキャベツは病害虫の被害が多く、ブロッコリーやカリフラワーなどは栽培期間が長く、栽培が難しいといえます。
ナスやトマトなどの夏野菜や、スイカやメロンなども、整枝などの手間がかかります。
経験や畑の条件に応じて、栽培する野菜を選び、少しずつステップアップしていくのがよいでしょう。
多くの種類を少しずつ育てよう
家庭菜園でとれた野菜は自分の家で食べるものですから、同じものがたくさんとれても消費しきれません。
また、自然相手の作業になるので、その年の気候によって失敗してしまう野菜も少なからずあります。
たとえば、天候不順で実もの野菜がうまくいかなかったとしても、葉もの野菜はうまくいったということがあります。
そのため、ひとつの種類の野菜を多くつくるよりも、少しずつ多くの野菜をつくった方が、失敗したときのリスクも少なくなります。
畑の広さにもよりますが、ナスやピーマンなど実がたくさんとれる野菜は2~3本、ホウレンソウや小松菜などの葉もの野菜は1畳ほどあればじゅうぶん収穫できます。
ニラや大葉などは菜園の通路沿いや境界などでも育ちます。
時期をずらして種をまこう
ホウレンソウや小松菜、ラディッシュなど、栽培期間の短い野菜は、2週間ずつ時期をずらして種をまくと、長く収穫を楽しむことができます。
枝豆やツルなしインゲンなど、収穫期間の短い野菜も、時期をずらして種をまくのがおすすめです。
秋に育てる野菜のことも考えよう
家庭菜園では野菜を育てるスペースが限られるため、同じ場所で春作と秋作の野菜を育てることになります。
栽培期間の長いナスやピーマンなどの野菜を畑一面に植えてしまうと、夏に種をまく野菜や苗を植える野菜の栽培ができなくなります。
秋に育てる野菜のことを考えて春から育てる野菜の種類や量を決めます。
8月に苗を植えるブロッコリー、種をまく人参をつくるには、早めに栽培が終わる枝豆やツルなしインゲン、ジャガイモなどを栽培します。
栽培期間の長いナスやピーマンの後には、栽培期間の短い葉もの野菜などを栽培するようにします。
野菜が育ったときの大きさを知ろう
野菜をどこで育てるかを決めるには、野菜が育ったときの大きさを知っておくことも大切です。
野菜が育ったときに込み合わないように、ゆとりをもって配置しなくてはなりません。
また、草丈が高くなる野菜を南側に配置すると、北側に配置された野菜が陰になってしまいます。
野菜の高さや方位も考えて配置を決めましょう。
[大きく育つ野菜]
つるありインゲン、エンドウ、オクラ、カボチャ、キュウリ、ゴーヤ、サツマイモ、里芋、ズッキーニ、スイカ、ツルムラサキ、トマト、ナス、ピーマン、ブロッコリー、メロンなど。
栽培適期を確認しよう
野菜の種や苗は適期よりも早い時期から出回ります。
しかし、売られているからといってすぐ栽培をスタートできるものではありません。
野菜ごとに栽培に適した温度があるからです。
さらに同じ野菜でも、品種によって栽培適期が異なるものがあります。
例えばホウレンソウは、高温に強い夏どり専用品種や、寒さに強い秋冬どり専用品種があり、栽培したい時期に合った品種を選ばなくてはなりません。
適期をはずすと、生育は難しくなります。
栽培する地域での栽培時期の気温に合わせ、野菜の種類や品種を選びます。
また、気温の低い時期は保温して温度を保つなど、対策をすることもできます。
育てる野菜の栽培適期は、種袋の「まきどき」などでも確認できます。
「科」を意識しよう
科というのは、生物を分類する大きなグループの単位です。
野菜では、ナスやトマトの属するナス科、キュウリやスイカの属するウリ科などが当てはまります。
ジャガイモとナスが同じ仲間と思えないものもありますが、花が似ていたり、類似点があります。
科の異なる野菜を後作に作ることで、連作障害を免れることができます。
育てる野菜がどの科に属するかは、種袋などでも確認できます。
[ナス科]
トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、シシトウ、ジャガイモなど。
[ウリ科]
キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ、ズッキーニ、ゴーヤなど。
[アブラナ科]
白菜、キャベツ、小松菜、ミズナ、チンゲンサイ、ルッコラ、カブ、大根など。
[マメ科]
インゲン、枝豆、落花生、エンドウ、ソラマメなど。
「休栽期間」を意識しよう
一度栽培したら次に同じ科の野菜を育てるまでに間をあけた方がよい期間を休栽期間といいます。
野菜の種類によって間をあけなくていいものから、5年ほど間をあけないといけないものがあります。
休栽期間は同じ科の野菜を育てないように、畑をいくつかのスペースに分割(畝)して、場所を変えながら育てていきます。
これを輪作といいます。
家庭菜園では、この輪作と連作障害を考慮して、緻密な作付け計画を立てることが大切です。
[1年休むもの]
ホウレンソウ、インゲンなど。
[2年休むもの]
ニラ、パセリ、レタス、ハクサイ、キャベツ、セロリ、キュウリ、イチゴなど。
[3年休むもの]
ナス、トマト、ピーマン、サトイモなど。
[4~5年休むもの]
スイカ、エンドウなど。
連作を避けよう
ほとんどの野菜は、同じ場所で2年以上続けて栽培すると、生育が悪くなったり、病気が出たりして、うまく育たなくなります。
この現象を「連作障害」や「いや地」といって、土壌の栄養が偏ったり、病害虫が出やすくなったりします。
野菜の種類が違っても、同じ科であれば、連作障害が出ることがあります。
例えば、ジャガイモ、ナス、トマト、ピーマン、シシトウ、トウガラシは、見た目がまったく違いますが、同じナス科の植物で、これらの野菜を繰り返し栽培すると連作障害がおこることがあります。
2年目以降の作付け計画は、しっかりと行うことが大切です。
連作障害を避けるには、畑をいくつかの区画に区切って、栽培する野菜をローテーションさせることです。
ポイントとしては、栽培したい野菜がどの科の植物なのか調べ、一つの区画に同じ科の野菜を集めて栽培することです。
スペースが限られた家庭菜園では、このローテーションを考えながら作付け計画を立てていくことが重要になります。
[関連記事]
知っておきたい連作障害
作付け計画(菜園プラン)を立ててみよう
休栽期間や科を確認したら、実際に作付け計画を立ててみましょう。
畑をいくつかにわけ、栽培する野菜の性質を知ったうえで、どこに何を植えるか具体的に決めます。
種まきや苗の植えつけ時期などのスケジュールと栽培期間、輪作を考えながら計画を立てていきます。
Step1:畑を区分けする
畑のどこで何を栽培するかを決めるために、畑のサイズを測り、中をいくつかに区分けしてみてください。
この分けた区画のことを畝といって、野菜を育てる場所と通路を区別することができます。
作業のしやすさや成長後の野菜の大きさを考えて、畝の幅や通路の広さを決めましょう。
[区分けのポイント]
- 畝の方向は生育の良い南北が望ましい
- 作業がしやすいように畝の間に通路を設ける(幅30cm以上)
Step2:育てたい野菜をリストする
育ててみたいと思う野菜をリストアップしてみましょう。
それによって、どんな野菜があるのか整理にもなります。
育てたいと思う野菜をすべてリストアップしてみてください。
[育てたい野菜をリストアップするポイント]
- 多く消費する野菜(タマネギ、ジャガイモなど)を選ぶ
- 新鮮なほど美味しいといわている野菜(トウモロコシ、ソラマメ、イチゴなど)を選ぶ
- 健康に良いといわれている野菜(オクラ、ゴーヤなど)を選ぶ
- くだもの的な野菜(スイカやメロンなど)を選ぶ
Step3:育てたい野菜に優先度をつける
選んだ野菜に優先度をつけてみましょう。
難易度や面積などが気になるかもしれませんが、まずは気にせずに優先度をつけてみてください。
[優先度をつけるポイント]
- 家計を助けたい(多く消費する野菜)
- 収穫できたらうれしい(収穫の醍醐味)
- 家族が喜びそう(芋掘り体験など)
- 栽培が簡単そう
Step4:カレンダーに育てる野菜を記す
どの区画でどの野菜をいつ育てるかを決め、簡単なカレンダーを作成します。
例の表はエクセルで作成していますが、紙に手書きでもかまいません。
パソコンであれば簡単に変更を行えて便利です。
カレンダーへの記入は、優先度の高い野菜から順に行っていきます。
野菜にはそれぞれ栽培に適した時期があるので、栽培時期を調べて、カレンダーに記していきます。
そのほかにも、野菜の後作の相性や、連作障害を防ぐための輪作など、カレンダーに記するうえで考慮する必要があります。
優先度の高い野菜であっても、カレンダーの時期が埋まっているのであれば、むりはせずに思いきって外しましょう。
作付け計画がある程度決まることにより、なにをいつやるべきかが明確になるはずです。