プランターで野菜を育てるうえで、病害虫防除は避けては通れない問題です。
虫に食べられて穴があいたり、病気にかかって傷んだ葉や実は、残念ながら元に戻ることはありません。
野菜を害虫の被害から守るためには、害虫の少ない時期に育てる、害虫が嫌う植物をいっしょに植える、虫が寄りつけないようにネットをかけるなど、総合的に管理して、野菜を健全に育てなくてはなりません。
野菜を元気に育てるために、病気や害虫について知っておき、対処できるようにしておきましょう。
目次
土が酸性になったら中和
野菜にはそれぞれ生育に適した土の酸性度合いがあります。
これをpH(ピーエイチ)といって、多くの野菜に適した酸度はpH6.0~6.5程度の弱酸性といわれています。
pHが合わないと根が傷んだり、養分や水分がうまく吸収できずに生育不良になります。
培養土を購入するときは適正なpHに調整されたものを選び、自分土をブレンドする場合や、土をリサイクルする場合は、培養土にアルカリ性の苦土石灰を混ぜ込みます。
病害虫の発生時期を知る
病害虫の発生を完全に避けることはできませんが、病害虫の発生しやすい時期を知ることで、ある程度の防除は可能です。
時期によって、被害を受けやすい野菜と病害虫の種類はほぼ決まっています。発生初期のうちに見つけて被害を最小限に抑えます。
病害虫の発生の少ない時期を選べば、被害が少なく、育てやすくなります。
連作を避ける
連作とは、同じ野菜や同じ科に属する仲間の野菜を同じ土で育てることです。
連作を続けると、連作障害といって、生育が著しく悪くなったり、病気にかかりやすくなったりします。
連作障害を避けるためには、同じ科の野菜を繰り返し栽培しないことです。
一作ごとに新しい培養土に取り替える場合は問題ありませんが、培養土を消毒しないで再利用する場合は注意が必要です。
栽培する野菜を変えていくことを心がけ、夏に熱消毒をするなどして定期的にリフレッシュしましょう。
[関連記事]
連作障害を知っていますか?
病害虫に強い野菜を栽培する
アブラナ科の小松菜や白菜に比べると、アカザ科のホウレンソウやスイスチャードは病害虫の被害にあいにくいものです。
独特の匂いがあるセロリや人参などのセリ科の野菜もあまり虫がつきません。
初心者は、このような病気や害虫のつきにくいものを育てるのがおすすめです。
病気に強い品種を選ぶ
病気に強い品種を選んで育てるのも一つの手です。
品種改良によって、野菜ごとに大きな被害を受けやすい病気に対して抵抗性や耐病性をつけた品種がつくられています。
種の袋にどんな病気に強いのかが書かれていたり、品種名に示されていたりするので、品種を選ぶさいに参考にしましょう。
環境をよくする
野菜が好む環境をつくれれば、野菜の成長は健やかになります。
水はけのよい土、肥料もちのよい土、日当たりと風通しのよい場所、適切に肥料と水を与えれば、病害虫からの被害を最小限に抑えることができます。
適期に栽培する
野菜には、暑い気候を好むもの、冷涼な気候を好みものなど、生育に適した温度があります。
生育適温で育てると、生育は順調に進み、病害虫の被害も抑えられます。
野菜の性質を知り、適した季節に育てましょう。
季節に合った品種を使う
葉もの野菜や根もの野菜は、品種によって春から育てるのに向くものと、秋から育てるのに向くものに分かれます。
種苗カタログを見ると、春まき向き、秋まき向き、もしくは両方にまけるものなど、品種のまきどきがわかります。
適切な間隔で植える
芽が出たばかりのときや、植えたての苗のときは小さく思えても、野菜はグングン育って大きくなります。
葉が重なり合って日光がまんべんなく当たらなくなったり、風通しが悪くなったりすると、病気や害虫が発生しやすくなります。
そのため、種まきや苗の植えつけは、野菜に適した間隔をとりましょう。
[関連記事]
たくさん発芽させて間引きをしよう
多品目を育てる
プランターで野菜を育てるには、多くの種類を少しずつ育てるのが基本です。
たくさんの野菜を育てていると、どれか失敗しても、ほかの野菜は収穫できるものです。
一つの野菜だけに絞らず、いろいろな野菜を栽培して楽しみましょう。
コンパニオンプランツを植える
一緒に植えると互いの病害虫を防ぐなど、よい影響を与える植物をコンパニオンプランツと呼びます。
ただ虫を寄せつけないようにするだけでなく、互いに成長を促したり、味や香りをよくする効果もあります。
野菜と相性のよい代表的なものがハーブです。
たとえば、トマトのそばにハーブのバジルを植えると、トマトにつく害虫を予防でき、余分な水分をバジルが吸収してくれるため、トマトの味がおいしいものになります。
ハーブ以外では、ネギやタマネギ、ニンニクなどのネギ類がコンパニオンプランツとしてよく利用されます。ネギ類の根に共生する微生物が繁殖して病原菌がつくのを防ぐ効果があります。
すべての野菜に有効というわけではなく、よく働く相性のよい組み合わせがあります。
[関連記事]
コンパニオンプランツで手間いらず害虫予防
野菜を防虫ネットで覆う
種まきや苗の植えつけを終えたら、トンネル用の支柱をプランターに設置し、その上に防虫ネットを被せ、防虫ネットの裾をひもで縛るなどして隙間をなくします。
薬剤を使わなくても、ある程度害虫を予防することができます。
プランター向けに支柱とネットがセットになった製品があるので、使うと便利です。
[関連記事]
防虫ネットを被せて虫よけ
野菜をよく観察する
農薬を使わないで野菜を育てるには、野菜をよく観察して、害虫が発生したら、直接手で取り除くのが基本です。
とくにイモムシ類は食欲が旺盛で、放っておくとすぐに丸坊主にされてしまいます。
害虫を見つけたら、放置せずにただちに捕殺しましょう。
注意したい害虫
プランターで野菜を育てていると、たくさんの虫が寄ってきます。
[アオムシ]
モンシロチョウの幼虫で、アブラナ科の野菜の葉を食べてボロボロにします。
[アザミウマ類]
幼虫、成虫が集団で汁を吸い、葉や実がかすり状に色が抜けます。
[アブラムシ]
多くの野菜が被害を受ける代表的な害虫です。
汁を吸って加害するだけでなく、その際にウイルスを媒介して病気の原因にもなるので、見つけしだい防除します。
[ハモグリバエ]
成虫が葉の裏に卵を産み、幼虫が葉を食害します。
葉肉の間を曲がりくねって食害するため、エカキムシとも呼ばれます。
[ウリハムシ]
成虫はオレンジ色の小さなハムシで、キュウリやカボチャなどのウリ科の葉を食べます。
幼虫は根を食べるため、水分吸収ができなくなり、日中はしおれて夕方には回復するという状況を繰り返します。
[ハマキムシ]
オクラの葉や芽などを食べるワタノメイガの幼虫です。
葉の端をぐるりと巻いて、その中に潜んでいます。
[タバコガ]
ピーマンやトウガラシなどの果実にもぐって食害します。
実に小さな穴があいているときは、食害された可能性が高いです。
[カブラハバチ]
大根やカブなどのアブラナ科の葉を食べる黒紫色の害虫です。
[カメムシ]
種類が多く、大きさもいろいろです。
茎や葉、実について樹液を吸うため、株の成長が妨げられます。
[ニジュウヤホシテントウ]
テントウムシダマシとも呼ばれ、ジャガイモについて葉を食べます。
[キアゲハ]
幼虫が人参の葉を食べます。
触れるとオレンジ色の匂いのある臭角を出します。
[コナガ]
キャベツやブロッコリーなどのアブラナ科の野菜につく代表的な害虫です。
蛾の一種で、アオムシに似た緑色の幼虫が葉を食べ、半透明の痕が残ります。
[ハダニ類]
成虫、幼虫が集団で葉の裏に寄生して汁を吸います。
葉の色が白く抜け、被害がひどいと枯れてしまうことがあります。
注意したい病気
プランターの置き場の環境が悪かったり、水や肥料を与えすぎると、病気が発生しやすくなります。
病気の症状が出ていたら早めに対処しましょう。
[ベト病]
葉の表は多角形の黄色い斑点、裏は黒いカビが出て、べとつきます。
とくにウリ科の野菜に発生しやすく、ほかにアブラナ科の野菜に多く発症します。
[白サビ病]
春や秋、雨の多い年に多発します。
粉をふいたような白い斑点が葉の裏にできます。
[軟腐病]
梅雨時期から秋までかかりやすい病気です。
土の中の細菌が野菜の傷口や水孔から入り込み、増殖して軟化、腐敗させます。
株元が茶色く変色し、ひどくなると溶けたように腐り、悪臭がします。
[疫病]
カビが原因の病気で、茎や葉に黒褐色の斑点が出て、カビが広がります。
[うどんこ病]
カビが原因の病気で、葉や果実、株全体がうどん粉のような白いカビに覆われます。
春と秋に発生しやすく、風通しが悪いととくにかかりやすくなります。
[モザイク病]
ウイルスによる病気で、葉や果実にモザイク状の模様ができます。
感染すると株の成長が止まったりします。
[灰色カビ病]
土の中のカビによる病気です。
葉や花、茎、果実などが灰褐色のカビで覆われます。
[青枯病]
土の中の菌が原因で、葉や茎が緑のまま、萎れて枯れます。
病気が発生したら
日ごろから野菜をよく観察し、病気の早期発見に務めます。
葉がしおれたり、変形したり、葉が枯れたりするのは、病気のサインかもしれません。
病気の兆候が見られたら、すでに病原菌が増えているかもしれないので、株ごと抜き取り、焼却したり、ゴミに出したりして処分して、病気を広げないようにしましょう。
放置しているとほかの株に病気が移るので注意します。
害虫を見つけたら
害虫は、病気の発生の原因を媒介したり、葉や茎、実を食べるなどの被害を起こします。
食べ痕やフンがある場合は、どこかに害虫がいることが多いので、よく観察して見つけます。
アリが葉や茎にいる場合は、どこかにアブラムシがいるかもしれません。
適切な防除を行うためには、害虫の種類を知る必要があります。
葉の裏や株元などの見えにくい部分もこまめにチェックして、見つけしだい取り除きましょう。
自然の成分を使う
有効成分が食品由来のものや、有用生物を利用したものは、人体に与える影響が少なく、化学農薬に抵抗のある人におすすめです。
太陽熱消毒で土をリフレッシュ
繰り返し栽培した土の中は、特定の微生物の割合が多く、病気や害虫が発生しやすくなります。
そのような場合は、夏に天日干しして、太陽熱を利用して殺菌します。
太陽の熱による土の消毒には60℃以上の高温を数時間保つ必要があります。
このため、真夏で晴天が続く7~9月が作業の適期です。
ビニール袋に土を入れて密閉し、直射日光のよく当たるところへ出して10日以上置いておくと、中の土は60℃以上にもなり、殺菌することができます。
[関連記事]
使い終わった土は捨てずに再利用しよう
農薬を使うには
株が小さい間や発生初期だけ農薬を使用するのもよいでしょう。
ただし、農薬の使用は農薬取締法という法律に定められています。
農薬を購入する際は必ずパッケージ裏面の適用のある野菜と病害虫名、使用時期、使用回数を確認してください。
[関連記事]
農薬は正しくじょうずに使いましょう