江戸野菜という言葉を聞いたことがありますか?
江戸野菜は、江戸の風土にあった野菜のことです。
ルーツは江戸時代にさかのぼります。
諸国の大名が、参勤交代で江戸に来る際、地元の野菜を食べようと野菜の種を持ち込み、江戸で育てた結果、その野菜が交配して今に続いているのが江戸野菜です。
練馬大根などが知られていますが、ただ単に特産品というだけでなく、ちゃんと江戸の風土にあった品種に育てられているわけです。
どんな野菜があるの?
江戸野菜は、京野菜や加賀野菜のようにブランドではありません。
ですが、築地市場も普及活動を進めており、一部の人の間で愛されています。
やはり食べ物は地産地消が一番ですから、東京の人にもっと江戸野菜を食べてもらいたいものです。
江戸野菜には、亀戸大根、練馬大根、品川カブ、寺島茄子、東京ウド、谷中生姜などがあります。
どれも東京を代表する野菜で、江戸時代の参勤交代の時代から、交配を繰り返して良好な品種のみが生き残ったものです。
江戸時代の野菜栽培は?
江戸時代、人々が口にする野菜はどのようにして作られていたのでしょうか。
江戸の市中で消費される野菜は、近郊の農村でつくられていました。
ですが、江戸の人口がとても増えるにしたがって、畑などが増えていきました。
まだ生鮮食品などの物流が整っていなかったこともあり、江戸時代では種の形で野菜が運ばれていました。
江戸の風土に合うように改良され、選別されて、徐々に江戸野菜が出来上がっていったものだと考えられています。
そうして、江戸時代の人たちの食卓にのぼっていました。
たとえば、小松菜などが有名です。江戸川区の小松川の付近で栽培されていたものが、近年になって全国に広がったというわけです。
それまでは、江戸を中心として栽培されていました。
江戸時代は新鮮な野菜を運ぶ物流ルートが整っていなかったので、自然と地産地消になっていたのです。
地方からやってきた種たちが、より美味しく実をつけるように仕上げられ、選別されて、生き残ったのが今の江戸野菜のルーツになります。
やがて街道沿いにタネ屋ができるようになり、江戸土産として江戸で取れた野菜が地方に流れていくようになりました。
逆に、江戸では消滅してしまった野菜が、地方に逆輸入されてそこで新たなブランドとして生き残るということも起こったのです。
江戸野菜を残す運動
いまの東京は野菜を栽培するのにあまり適した場所ではありませんよね。
ですが、江戸野菜は歴史が産んだ伝統です。
その江戸野菜を絶やさないように、さまざまなグループが江戸東京野菜として、江戸野菜を現在に残す取り組みを行っています。
早稲田茗荷という野菜があったのですが、現在ではほぼ絶滅しかかっていたところを、有志が民家の庭先に残っているのを発見し、保護して今ではレストランなどで使われるようになってきています。
いまの東京は畑などがあまりなく、野菜は地方から購入してくるものがメインになりつつありますが、江戸時代からの伝統と、歴史を持つため、関心を持ってみてはいかがでしょうか。
どの野菜もとても美味しく、独特の味です。
地元のレストランなどでは一部、採用されているところがあります。
小松菜が有名
江戸野菜では小松菜が有名です。
八代将軍徳川吉宗が鷹狩の際に食べた青菜がとてもおいしかったことから、その小松川を名前にして、小松菜と命名されました。
小松菜といっても、現在全国に出回っているものは、チンゲンサイとの交配種なので、姿が違います。
江戸野菜の方の小松菜は、伝統小松菜と呼び、一般の小松菜は葉がまばらにひろがっており形状が異なります。
(文/渡邉ハム太郎)