タマネギの原産地は中央アジア、西アジアなどの諸説あり、歴史は極めて古く、エジプトやヨーロッパでは紀元前から栽培されていたといわれ、日本で本格的栽培されるようになったのは明治中期からです。
近年は4月から6月に新タマネギが出回るようになりましたが、貯蔵性に富むため一年を通して流通します。
日本で多く栽培される黄タマネギは貯蔵性に優れるため、一年中市場に出回りますが、ほかに辛みマイルドでサラダに向いている赤タマネギがあります。
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タマネギって根?茎?葉?
根野菜に見えますが、これは根ではなく、茎が太った鱗茎(りんけい)です。
厳密にいうと、葉ということになります。
いろいろなタマネギ
[新タマネギ]
早生種を春先に収穫したものです。
水分が多くてやわらかく、辛みも少ないため、サラダに向きます。
[葉タマネギ]
タマネギがふくらむ前に収穫し、やわらかい葉も食べます。
ぬたにして食べると甘くて美味です
[赤タマネギ]
赤紫色の外皮が特徴の品種です。
辛味が少なく食感がよいためサラダに向きます。
[小タマネギ]
ペコロス、またはプチオニオンと呼ばれ、黄タマネギを3~4cmほどの小型にした品種です。
丸のままシチューやカレー、ピクルスなどに使います。
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タマネギの育て方
北海道では春まきして秋に収穫しますが、そのほかの地域では、秋まきして翌年の春から初夏に収穫するのが一般的です。
晩夏に種まきして苗をつくり、本格的に寒くなる前の11月中旬に苗を植えかえて栽培します。
タマネギの成否は植えつける苗によって決まるといっても過言ではありません。
しっかりした育った苗を植えると、球も大きくなります。ただし、大きくなりすぎた苗を植えると、収穫期にトウ立ちすることがあります。
かならず適期に種をまき、植えつけ適期までに太さ5~6mmくらい(鉛筆より少し細い)の苗をつくるのがポイントです。
化成肥料を1月中と3月上旬に追肥し、以降に追肥すると、首の締まりの悪い球になり、保存が効かなくなります。
春先になったら、草が伸びる前に株元の除草を行います。7~8割がたの茎が倒れたら、一気に収穫します。
栽培期間が少し長く、手間もかかりますが、収穫後にじょうずに干して保存すれば、いつでも自由に使えて便利です。
栽培の概要
生育温度 | 15~20℃。 | ||||
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土壌酸度 | 6.0~7.0。 | ||||
連作障害 | なし。 | ||||
育てやすい品種 |
[青切り用] ソニックなど。 [貯蔵種] O・P黄、ターボ、ラッキー、パワー、アトン、ネオアース、ノンクーラーなど。 [サラダ用] 湘南レッド、ルージュなど。 |
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元肥 | 苦土石灰と元肥を入れる。 | ||||
種まき時期(苗作り) | 9月中旬。 | ||||
苗の植えつけ |
11月中旬ごろ。 畝幅:90cm。 黒マルチ:あり(なくても良い)。 株間:条間15cm、株間15cm。 |
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栽培中の管理 |
追肥1回目:1月中。 追肥2回目:3月上旬。 |
||||
収穫 | ぜんたいの7~8割程度の茎が倒れたら。 | ||||
病害虫 |
主な病気:苗時の立ち枯病、畑に苗を植えてからの白色疫病、べと病、軟腐病、灰色腐敗病など。 主な害虫:タネバエ、ネギアザミウマ、ネギアブラムシなど。 |
栽培のポイント
- 適期に種をまいてよい苗を育てる
- 発芽するまでは土を乾かさない
- 植える苗の大きさに注意する
- 収穫までの期間が長いので黒マルチをして雑草対策をする
- 冬の間に追肥する
- 霜柱が立つ前までにしっかり根を張らす
栽培時期
※品種や地域によって栽培時期は異なります。事前に確認してください。
[植えつけ時期に関しての大事な注意点]
苗の植えつけが早すぎると、冬に大きく成長して春にとう立ちしてしまいます。必ず適した時期に苗の植えつけを行いましょう。
育てやすい品種
[青切り用]
ソニックなど。
[貯蔵種]
O・P黄、ターボ、パワー、アトン、ネオアース、ノンクーラーなど。
[サラダ用]
湘南レッド、ルージュなど。
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苗をつくる
9月中旬に種をまいて育苗し、 11月中旬に定植します。
苗のできが収穫をほぼ決定づけるので、定植する苗の大きさにはじゅうぶんに注意が必要です。
小さな苗では、冬場の寒さで枯れ、逆に大きい苗では春になってトウ立ちします。適期に適度な大きさの苗を植えることが重要です。
長さ20~25cm、太さ5~6mmくらい(鉛筆より少し細い)の苗を目指します。
プランターや底に穴をあけた発泡スチロールなどに培養土を入れます。
5cm間隔で軽く溝をつけ、溝の中に1cmほどの間隔で種を条まきし、溝の両側の土をつまんで種にかけ、手のひらで表面を軽く押さえます。
種をまいたら、水をたっぷりかけ、新聞紙をぬらしてかぶせます。
発芽したら新聞を取り除き、葉の数3~4枚、太さ5~6mmになるまで育てます。
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畑の準備
タマネギの連作障害はほとんどでませんが、できれば1年はあけます。
また、タマネギは酸性の土壌を嫌うので、酸性に傾いた土壌ではかならず石灰を施し、よく耕しておきます。
苗を植える2週間前に、苦土石灰を畝を立てる場所全面にまいてよく耕し、植える1週間前に、堆肥と化成肥料をまいてよく耕して混ぜ込み、畝を立てて黒マルチを張ります。
水はけの悪い場所であれば、畝を高めに立てます。
黒マルチは、霜柱で持ち上げられるのを防ぎ、乾燥防止や雑草を抑える効果があります。
15cm間隔に穴のあいているタマネギ用を黒マルチを使用すると便利です。
苗を植える
タマネギの最適な植えつけ時期は11月中旬ごろです。
春になったら勢いよく育つように、冬までにじゅうぶんに根を張らせることが大切です。
種まきから2か月ほどして、苗が長さ20~25cm、太さ5~6mmくらい(鉛筆より少し細い)に成長したら、条間15cm、株間15cm程度に植えつけます。
太いものから順に植えていきます。
マルチの穴に1本ずつ、根が土中に深く入るように棒などを利用して深めに穴をあけ、苗を垂直に立てて植えます。
埋める茎の深さは約2cmです。深く植えすぎると成長しないので注意しましょう。
冬越し(防寒)
冬の霜で苗が持ち上げられてしまうのを防ぐため、霜が降りる前までに、もみ殻やくん炭、バーク堆肥などを株元に敷いておきます。
それでも浮き上がってくるようでしたら、株元を押さえて鎮圧します。
追肥
追肥は株の休眠前後に1回ずつ行います。
マルチの穴から株元に化成肥料をまき、土と肥料を軽く混ぜ、株元に土を寄せて軽く押さえます。
1回目の追肥:1月中
2回目の追肥:3月上旬
4月以降の球が肥大しはじめるころから追肥すると、球が腐敗しやすくなり、貯蔵性を損ねます。
霜柱対策
畑に霜柱が立つと、土が盛り上がって根が浮いてしまい、土から抜けてしまうことがあります。
これを防ぐためには、霜柱が立つ前までに根をしっかり張らすことが大切です。
寒くなってきたら株元をしっかり手で押さえて固めて土と根を密着させると、抜けるのを防ぐことができます。
収穫
5月下旬~6月上旬ごろ、葉が黄色くなり、ぜんたいの3割程度の茎が倒れたら収穫をはじめ、7~8割倒れたらすべて収穫します。
晴天が続きそうな日を選んで引き抜き、そのままマルチの上に並べ、3日間おいて乾燥させます。
葉タマネギとして利用するなら、4~5月、球が肥大しはじめたころに抜き取ります。
収穫後の保存
畑に干して茎が乾燥したら、5個ずつ茎を結んで束ね、さらに2束ずつひもでしばって吊るせるようにします。
ネットに数個入れて吊るしてもよいです。
軒下などの雨があたらない風通しのよい場所に吊るして保存します。
貯蔵に適した品種であれば、このまま2月まで保存できます。
吊るす場所がないときは、茎や葉を切り取り、コンテナなどに入れて保存します。
病害虫
タマネギの主な病気は、苗時の立ち枯病、畑に苗を植えてからの白色疫病、べと病、軟腐病、灰色腐敗病などです。
また、タネバエ、ネギアザミウマ、ネギアブラムシなどの害虫にも注意が必要です。
酸性の土壌を嫌うので、酸性に傾いた土壌ではかならず石灰を施して土壌酸度を調整します。
肥料の窒素が効きすぎると腐敗しやすくなるので肥料の与えすぎに注意します。
排水対策をしっかり行い、種まき前の未熟な堆肥の使用を避け、多湿にならないようにしましょう。
コンパニオンプランツ
タマネギの株間にキク科のハーブのカモミールを植えると、タマネギの生育を助け、病害虫を減らす効果が期待できます。
タマネギの後はウリ科の野菜を育てよう
タマネギは消費が多く、保存もできることから、1畝や2畝を丸々使うなど、広い面積で栽培されることの多い野菜です。
ただ、タマネギの収穫時期が5月下旬~6月初旬であるため、片づけて新たに畝を立てるなどの準備をしていると、育てられる野菜が限られてしまいます。
そこで、タマネギの収穫前にミニカボチャや小玉スイカ、地這いキュウリなど、ウリ科の野菜の苗を植えるのがおすすめです。
トウ立ちした株を抜いたり、欠株したところにウリ科の野菜の苗を植えます。
タマネギを栽培した後には肥料が比較的多く残っているので、元肥は施さなくても育ちます。
苗を購入するには
栽培したい株数が少ないときは、苗を購入してもよいでしょう。
タマネギの苗は、ホームセンターや園芸店などで、11月初旬ごろより販売されます。
中には細いものや、太いものなどがあります。できれば、11月中旬ごろに太さ5~6mmくらいの苗を購入して植えましょう。
オニオンセット栽培
もっとも簡単なのが、市販の直径約2~2.5cmの小球(ホームタマネギ、またはセット球と呼ばれる)を購入して、球根のように植えるオニオンセット栽培です。
栽培時期が苗から育てるのと異なり、8~9月に植えつけて、12月~翌2月に収穫します。
年内に新タマネギを収穫したい人におすすめです。
種とり
種をとることのできる品種は、泉州中甲高黄大玉葱や奥州玉葱などの固定種です。ネオアースやアトンなどのF1種は種とりしても、同じ形質のタマネギはできません。
種とりは、貯蔵していたタマネギのなから形質のよいものを選び、10~11月に2条、株間30cmに植えつけます。
植える深さは、収穫時のタマネギの深さを目安に、球が三分の一くらい埋まるように行います。
春になると、4~5本のトウが立ち、花茎が150cmくらいまで伸びます。風で花茎が倒れないように支柱を立て、花に雨があたらないように雨よけをします。
種がじゅうぶんに熟してこぼれそうになってきたら、ネギ坊主の下20cmくらいのところで刈り取り、10日間くらい陰干しして追熟させます。
ネギ坊主がよく乾燥したら、さやから種をもみだし、缶や瓶などに乾燥剤と一緒に入れて冷蔵庫で保存します。
トウ立ちした
地ぎわの茎の太さが1cm以上ある苗が10度以下の低温に1か月以上あうと、花芽が分化してトウ立ちする性質があります。
苗の植えつけ時期や、植えつける苗の大きさが重要なのはそのためです。
トウ立ちした球は、太りが悪く、細長くなります。早めに収穫し、葉タマネギとして食べます。
中心部にはかたい花茎があり、そのまわりの部分は食べられます。
植えた苗が倒れた
タマネギの株元が食い切られて倒れ、切れた葉や茎が土の中に引き込まれるのは、ネキリムシによる被害です。
ネキリムシは昼間は土の中に潜み、夜に活動してタマネギを食害します。
切られた株のまわりの土の中に隠れてしますので、株のまわりをほじくり返してみると見つかります。
植えた苗が枯れた
植えつけた苗が11月上旬ごろになって生育が急に悪くなったり、枯れたりすることがあります。
これはタマネギバエやタネバエの幼虫による食害です。
被害を受けた苗は助からないので抜いて処分し、新しい苗を植えます。
タマネギを切ると涙が出るのはどうして?
タマネギは、切ると細胞が破壊され、刺激成分の硫化アリルが発生し、目や鼻を刺激して涙が出ます。
刺激を抑えるには、切る前にタマネギを冷蔵庫でよく冷やし、よく切れる包丁で細かく切る、といった方法がおすすめです。
生でサラダに用いるときは、刺激成分は水溶性なのでスライスしてから水にさらすと辛みがやわらぎます。
切り方で食感が変わる
タマネギは、繊維に沿ってスライスすると、シャキシャキとした食感を楽しむことができます。
一方で、繊維を断つようにスライスすると、やわらかい食感になり、辛みは抑えられます。
話題のタマネギの外皮とは?
捨ててしまいがちな褐色の外皮ですが、ポリフェノールの一種ケルセチンやミネラルがたっぷり含まれます。
ケルセチンには抗酸化作用があるといわれており、動脈硬化予防、コレステロール上昇の抑制、血圧上昇の抑制、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を抑制する効果があるといわれています。
べジブロス(野菜のだし)に入れたり、煮出してデトックス効果の高いタマネギ茶にしたりと、最後まで余すことなく使えます。
また、タマネギの外皮は黄色や赤色の色素をもつ物質が含まれ、天然染色の原料にも使われます。