夏バテに欠かせないスタミナ野菜として知られるニンニク。多くの国で栽培され、料理や薬用として広く利用されています。
同じくスタミナ野菜であるネギやニラと同じユリ科ネギ属で、すぐれた食品機能をもつ野菜として注目されています。
中央アジアが原産で、古代エジプトではすでに強壮作用がある香味野菜として食べられ、ピラミッド建設の労働者に与えてスタミナづくりに役立てられたといわれています。
日本でも昔からネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、ノビルとともに五辛(ごしん)の一つにあげられ、不浄を去り疫病を払うとされてきました。
一般的に食用にするのは地下茎が肥大した部分の鱗茎(りんけい)と、花が咲く前の若い花茎を収穫したニンニクの芽ですが、最近では緑の葉を食べる葉ニンニクも食べられています。
スタミナ野菜として知られるのは、ネギ属の中でもっとも多くアリシンを含むからで、アリシンは体内でビタミンB1と結びついてビタミンB1の吸収率を上げ、疲労回復に働くためです。
また、強力な殺菌効果があり、風邪などのウイルス撃退にも効果を発揮します。
強烈なにおいが敬遠されがちですが、最近では品種改良によってにおいの薄いものが多く出回るようになり、丸ごと焼く「ニンニクのホイル焼き」など、料理の主役になることも多くなっています。
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目次
ニンニクいろいろ
12個前後の鱗片が輪になる在来種と、6個前後の鱗片が2層になってつく6片種があります。
なかでもホワイト6片はとくに甘みがあっておいしいとされ、高い人気がります。
ニンニクの育て方
ニンニクは、花は咲きますが、種子はできません。
花の基部に珠芽(むかご)ができ、珠芽から育てることができますが、一般的には鱗片(りんぺん)を種球として植えます。
鱗片を植えて栽培する場合は、9月下旬に植えつけ、冬を越して、5月下旬から6月中に収穫します。
ほかの作物よりも生育期間が長くかかりますが、病害虫の心配は少なく、植えつけてしまえばその後の手間がほとんどかからないので、初心者でも育てやすい作物です。
品種には寒地向き、暖地向きがあるので、種球を購入するときに確認しましょう。
栽培の概要
生育温度 | 15~20℃。 | ||||
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土壌酸度 | 6.0~6.5。 | ||||
連作障害 | あまりない。できれば1年以上あける。 | ||||
育てやすい品種 | 寒地向き:福地ホワイト、富良野など。 暖地向き:千葉在来、静岡在来、壱州早生、上海早生、鳥取ホワイトなど。 |
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元肥 | 苦土石灰と元肥を入れる。 | ||||
植えつけ時期 | |||||
種球の植えつけ |
9月中旬~下旬。 畝幅:90cm。 黒マルチ:あり(なくても良い)。 株間:条間20cm、株間10~15cm。 植え方:1片ずつにばらし芽を上にして5~7cmの深さに植える。 |
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栽培中の管理 |
わき芽かき:わき芽は早めに摘みとる。 追肥:球の肥大を開始する3月上旬。 除草:草が小さいうちに手で抜き取る。 トウ摘み:花芽が伸びてきたら手で摘み取る。 かん水:10月中旬~11月下旬ごろに乾燥がひどいようであれば水やり。 |
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収穫 | 株全体の3~5割が黄色くなってきたら。 | ||||
病害虫 |
主な病気:さび病、軟腐病、春腐病、葉枯病、モザイク病など。 主な害虫:アブラムシ、ダニ類、アザミウマ、ハモグリバエ、ヨトウムシなど。 |
栽培のポイント
- 地域に適した品種を選ぶ。
- 大きくて首の締まりのよい種球を選ぶ。
- 苦土石灰をしっかり施す。
- 黒マルチを使用する。
- 適期に植えつける。
- ならず芽のほう(尖った方)を上にして植える。
- 株元からわき芽が出てきたらかき取る。
- トウ立ちしたら早めに摘みとる。
- 乾燥が著しいときは潅水する。
栽培時期
※品種や地域によって栽培時期は異なります。事前に確認してください。
品種
ニンニクの品種は、寒地向きと暖地向きに大きく分けられ、生育に大きな違いがあります。
また、若い茎葉の利用を目的とした葉茎専用の品種もあります。
地域や用途に合った品種を選ぶことが大切です。
[寒地向き]
北海道や東北地方でおもに栽培されている品種です。
青森県で栽培されている福地ホワイトや北海道の富良野が代表的なものです。
[暖地向き]
四国や九州でおもに栽培されている品種です。
千葉在来、静岡在来、壱州早生、上海早生、鳥取ホワイトなどがあります。
そのほかに、ジャンボニンニクや葉ニンニク専用の品種があります。
ジャンボニンニクは、においが少なく、従来のニンニクの品種に比べて背丈が大きくなり、球も大型になります。
葉ニンニク専用の品種は、鱗片をとるニンニクより茎がやわらかく、茎葉をとるのに適しています。
種球の用意
種球は、病害虫に侵されていない大きくて首の締まりのよいものを入手して用います。
鱗片が極端に小さいものや形の悪いものは避けましょう。
1つの種球から鱗片が6個~10個とれ、1片ずつ植えつけます。
植えつける面積から必要な鱗片の数を計算し、少し余るくらいの量の種球を用意します。
畑の準備
ニンニクを栽培する場所は、日当たりが良くて水はけの良いところを選びます。
同じ場所で作り続けても連作による障害のでにくいですが、できれば、1年以上はニンニクを含むユリ科の作物を栽培していないところを選びます。
また、酸性の土壌を嫌うので、酸性に傾いた土壌ではかならず石灰を施し、土壌酸度を調整します。
種球を植える2週間前までに、苦土石灰をまいてよく耕し、1週間前になったら、堆肥と化成肥料を施して耕し、畝を立てて黒マルチを張ります。
黒マルチは、雑草の抑制や、保湿や地温を上げる効果に期待できます。
植えつけ
ニンニクは、高温期に休眠し、秋になると休眠から覚めるので、この時期に鱗片をばらして畑に植えつけます。
ばらしたときにカビや変色のあるものは避け、健全な鱗片だけを使用します。
種球を1片ずつにていねいにばらし、15~20cm間隔で、かならず芽のほう(尖った方)を上にして、5~7cmの深さに植えつけます。
深く植えすぎると生育が遅れ、浅く植えすぎると冷害を受けて生育が悪くなります。
わき芽かき
背丈が10cmぐらいになると、次々とわき芽が出てきます。
放っておくと種球の生育が悪くなるので、早めに摘みとります。
追肥
球の肥大を開始する3月上旬に化成肥料を施します。
除草
春になると植え穴の草も盛んに生育をはじめます。
除草が遅れると生育が悪くなったり、むれて病気が発生しやすくなるので、草が小さいうちに手で抜き取ります。
トウ摘み
春になって盛んに生育しはじめると、トウ立ちして花芽が伸びはじめます。
そのまま伸ばしておくと球の肥大が悪くなるので、花芽が伸びてきたら手で摘み取ります。
摘み取った花芽はニンニクの芽として炒めものなどに利用します。
かん水する
乾燥が著しいと葉先枯れが発生するため、10月中旬~11月下旬ごろに乾燥がひどいようであれば、マルチの上に敷き藁をして保湿したり、水やりをして乾燥を防ぎます。
収穫
収穫の目安は、下葉からしだいに枯れ上がってきて、株全体の3~5割が黄色くなってきたころです。
また、ときどき試し掘りをしてみて、尻の部分がほぼ平らになっていたら収穫を開始します。
肥大したものから株元を持って抜き取ります。
晴天の日に抜き取ったら、根を切り落とし、茎葉を1/3ほど切り落とし、その場で3~5日乾燥させてから使用します。
収穫適期を過ぎると球割れしてしまうので、割れる前に収穫しましょう。
病害虫
越冬前は病害虫の発生は少ないですが、越冬して生育が盛んになると発生しやすくなります。
害虫は、アブラムシ、ダニ類、アザミウマ、ハモグリバエ、ヨトウムシなどが発生することがあります。
病気は、さび病、軟腐病、春腐病、葉枯病、モザイク病などが発生することがあります。
害虫はこまめに観察して見つけしだい駆除し、春腐病が発生した株はすぐに抜き取って畑の外で処分します。
吊るして長期保存
畑で3~5日間乾かしたら、葉の先端を切り取り、8~10球ずつ束ね、雨のあたらない風通しのよい日陰に吊るして保存します。
30~40日ほど乾燥させて収穫したときよりも30%くらい重さが減ったら、ネットやコンテナに入れて風通しのよい日陰の納屋などで貯蔵します。
漬けて長期保存
醤油漬け、ハチミツ漬け、味噌漬け、オリーブオイル漬け、ニンニク酒などにすると長期保存でき、調理のときに手軽に使えます。
ニンニクの芽も人気
花が咲く前の若い花茎を収穫したものがニンニクの芽です。
ニンニクほどの強いにおいはなく、カロテンやビタミンCが豊富に含まれており、抗酸化作用を発揮してガンや老化の予防になるといわれています。
ニンニクの葉も食べられる
若葉を収穫したものが葉ニンニクです。
ニンニクほどの強いにおいはなく、ネギのようにきざんで食べられます。
においが気になる人は、加熱してにおいを抑えよう
ニンニクは熱を加えると、においが生の1/40になります。
さらに長時間煮ると、約1/200になります。
においが気になる人は、揚げる、煮る、蒸すなどの調理をするとよいでしょう。
薄皮を簡単にむくには
外側の皮をむいて1片ずつにばらし、ぬるま湯に5分ほどつけると、薄皮を引っ張るだけでつるりと簡単にむけます。
黒ニンニクとは?
ニンニクを熟成発酵させたもので、熟成黒ニンニクやフルーティーニンニクとも呼ばれます。
ニンニク特有の強いかおりはなくなり、甘酸っぱくなります。
真っ黒な色が特徴で、ポリフェノールやアミノ酸が多く含まれ、生のニンニクと比べて抗酸化作用は10倍といわれています。