中南米が原産のトウガラシは、「辛み種」と「甘み種」に分けられ、シシトウは辛みのない甘み種を代表するトウガラシです。
シシトウはシシトウガラシ(獅子唐辛子)の略で、実の先端がくぼみ、獅子の口のように見えることから、この名前がつきました。
栄養成分はピーマンとほとんど変わりませんが、ビタミンCやカロテンなどを豊富に含み、疲労回復に効果に効果があるとされています。
めちゃめちゃ辛い実に当たってビックリ!ということもありますが、これは水やりが不足していたり、環境などの条件によって先祖返りをして辛みをもったものがあらわれるからです。
暑さや病害虫に比較的強く、生育旺盛で、長期間収穫でき、初心者でも手軽に楽しむことができる野菜です。
[関連記事]
プランターでシシトウを育てよう
目次
シシトウの育て方
シシトウは、辛みのない甘み種のトウガラシで、完熟すると赤くなりますが、通常は未熟な緑色の実のうちに収穫します。
同じナス科のナスやピーマンよりも高温を好み、果菜の中でもっとも高温性で、暑さに強いのが特徴です。
高温性で育苗は大変難しく、家庭菜園では1~2株あれば十分なので、苗を買って畑に植えることをおすすめします。
シシトウは、茎が細く枝が折れしやすいので、丈が伸びてきたら、株元から少し離れたところに支柱を立て、主枝と2~3本の側枝を紐で吊って誘引して育てます。
また、シシトウは栽培期間が5月から10月と長いので、追肥をこまめに行い、肥料切れさせないように注意しましょう。
概要
生育温度 | 25~30℃。 | ||||
---|---|---|---|---|---|
連作障害 | あり。3年以上あける。 | ||||
元肥 | 元肥と苦土石灰を入れる。 | ||||
植えつけ時期 | 5月上旬(またはゴールデンウィーク)。 | ||||
植え付け方法 | 畝幅:90cm。 マルチ:黒マルチを張る。 株間:1列(または2列)、40~50cm。 苗の植えつけ後、仮支柱を立てて茎を結わく。 |
||||
仕立て | 長さ120cmの支柱を垂直に立て、主枝と2~3本の側枝を残し(計3~4本になる)、ほかの側枝はすべて取り去り、残した枝を紐で吊って誘引する。 | ||||
栽培中の管理 | 1回目の追肥:実がつき始めるころ。 以降の追肥:3週間に1回。 |
||||
収穫時期 | 実の長さが5~7cmほどの大きさになったら。 | ||||
病害虫 | 害虫:アブラムシ、ハダニなど。 病気:尻腐病、青枯れ病など。 |
ポイント
- 連作を避ける。
- 酸性に強く傾いた土壌ではかならず石灰を施す。
- じゅうぶんに暖かくなってから苗を植える。
- 追肥を適度に行う。
- 夏場に乾燥していれば水やりをする。
品種
トウガラシには辛み種と甘み種があり、辛みのない甘いトウガラシの中果系をピーマン、小果系をシシトウ、果肉の厚い大果系をパプリカ、辛みのある小果系をトウガラシと呼んでいます。
辛みのない甘いトウガラシの小果系には、伏見甘長や、万願寺唐辛子などがあります。
シシトウの品種としては、ジャンボししとう、改良シシトウ、翠臣などがあります。
栽培時期
※地域によって栽培時期は異なるので、事前に確認してください。
畑の準備
シシトウは連作を嫌うので、シシトウを含むナス科(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモなど)の野菜を3年以上栽培してない場所を選びます。
また、酸性の土壌を嫌うので、酸性に傾いた土壌ではかならず石灰を施し、よく耕しておきます。
苗を植える2~3週間前に、苦土石灰をまいてよく耕し、1週間前になったら、堆肥と化成肥料を施して耕し、高めに畝を立て、黒マルチを張ります。
畝を高めに立てることで水はけがよくなり、黒マルチを張ることで雑草の抑制と地温を上げる効果に期待できます。
苗を用意する
保温して種から苗を作ることもできますが、家庭菜園では1~2株あればじゅうぶんな量を収穫できるので、市販の苗を買って栽培した方が効率的です。
[良い苗の条件]
- 大きくてしっかりしている
- 茎が太い
- 本葉が7~10枚ついている
- 葉に艶がある
- 1番花が開花寸前である
シシトウは高温性で寒さには弱いので、十分に暖かくなってから苗を購入しましょう。
苗を植える
苗を用意できたら、植える前にポットにたっぷり水をやり(ポットごと水につけてもよい)、たっぷり水を含ませておきます。
あらかじめ準備しておいた畝に、1列(または2列)で間隔を40~50cmとし、マルチに穴をあけ、ポットの大きさほどの植え穴を堀ります。
根鉢をくずさないように注意してポットから苗を取り出し、浅く植え、株元を軽く押さえます。
植えつけ後、たっぷり水をやり、仮支柱を立てて苗が倒れないように茎を結わきます。
支柱を立てる
活着して丈が伸びてきたら、株元から少し離れたところに、長さ120cmの支柱を垂直に深さ30cmくらい差し込んで立てます。
立てた支柱に、茎を紐で8の字で結んで固定します。
茎を傷めないように緩めに結びましょう。
下の方の脇芽は摘み取る
成長して丈が伸びてくると、葉のつけ根に脇芽が出てきます。
下の方の脇芽は成長を妨げるので、一番花の下の脇芽を2本残し、それより下の脇芽はすべて摘み取ります。
追肥
実がつき始めたころ、化成肥料を追肥します。
以降は3週間に1回を目安に化成肥料を追肥します。
1回目の追肥:実がつき始めるころ。
以降の追肥:3週間に1回。
シシトウは栽培期間が長く、たくさん実のつけるため、多くの肥料を必要とします。
肥料切れしないように注意しましょう。
整枝する(枝を誘引・脇芽かき)
株が育ってきたら、主枝と2~3本の側枝を残し(計3~4本になる)、ほかの側枝はすべて取り去り、残した枝を紐で吊って誘引します。
ただし、手間を省きたい場合は、株間を広めにして植え、あとは放任してもじゅうぶんな量を収穫できます。
水やり
シシトウは細根が多く浅く分布するので、高温期の乾燥に弱く、水不足によるストレスで辛くなることがあります。
夏場は敷きわらなどをして保湿し、土が乾いたらじゅうぶんに水をやりましょう。
収穫
最初にできた実はまだ小さなうち(3~4cm)に収穫し、株を充実させます。
その後は、実の長さが5~7cmほどの大きさになったら収穫します。
手でへたの部分から摘み取るか、ハサミなどで切って収穫します。
収穫が遅れると、果実の曲がりが発生したり、株が疲れて弱るので、とくに最初のうちは小さなうちに収穫しましょう。
病害虫
シシトウは、ヨトウムシ、カメムシ、アブラムシ、ハダニ、アザミウマ類、タバコガなどが食害します。
アブラムシはウィルスを媒介するので、見つけしだい早めに駆除しましょう。
病気では、モザイク病、疫病などが発生します。
連作を避け、梅雨の時期は排水をよくし、適度に剪定して風通しをよくしましょう。
下葉を摘み取る
シシトウは栽培期間が長く、一度収穫したあとも10月ごろまで次々と実がなり続けます。
古くなった葉は病気の要因になるので、株の下の方の葉は取り除き、傷んでる葉も一緒に取り除きます。
更新剪定も有効
休みなしに収穫を続けると、夏の終わりごろには草勢が急に悪くなり、できる実の数が少なくなります。
10月末まで長く収穫を楽しむには、ナスでよく行われる更新剪定が有効です。
ただし、更新剪定して回復するまでの間は収穫ができなくなるので、数株ある場合は、すべてでなく数本を更新剪定するとよいでしょう。
更新剪定のやり方は、8月になって株の草勢が弱ってきたら、すべての枝の開花中の花の先で切り取り、追肥します。
新しい枝が伸び、10月末まで収穫できます。
苗を作るには
収穫開始が遅くなるが、遅霜の心配がなくなり、暖かくなってから種をまいて育苗します。
3号ポットに培養土を入れ、種を3~4粒ずつまき、土を1cmくらい被せ、たっぷり水をやります。
本葉が1~2枚くらいのころに間引いて1本にします。
本葉が6~7枚に育ったら、畑に植えます。
花が落ちてしまう
シシトウは多肥を好み、肥料切れや、乾燥によって花が落ちやすくなります。
追肥をこまめに行い、夏場は敷きわらなどをして保湿し、土が乾いたらじゅうぶんに水をやりましょう。
辛いシシトウができてしまった!?
収穫した実を食べたら、「辛くてびっくりした!」ということがあるかもしれません。
初めて栽培した方では、「もしかして、トウガラシの苗だったのでは?」と、心配になられるかもしれません。
シシトウは、トウガラシの中から辛みのないものを選抜したもので、乾燥などのストレスにより、先祖返りしてもともともっている辛みが出てしまうことがあります。
じつは、はっきりとした辛くなってしまう原因は分かっていませんが、いくつか説があります。
- 高温や乾燥によるストレス
- 夜の気温が高い
- 近くでトウガラシを栽培している(交雑)
また、辛いものを見分ける方法があります。
※完璧に見分ける方法はなく、あくまでも可能性です。
- 先が細く尖っている
- 艶がない
- 種が少ない
- 小さい
辛いのが苦手でしたら、とくに辛い種とヘタの部分をとって利用しましょう。
辛みを完全にとることはできませんが、辛みを抑えることができます。