ピーマンの育て方

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ピーマン

トウガラシの仲間のうち、果実が大きく、辛みのないものをピーマンといいます。

原産地は熱帯アメリカで、15世紀にコロンブスによってヨーロッパへ伝えられ、辛みのないトウガラシを改良してピーマンが誕生しました。

日本で栽培が始まったのは明治時代で、1960年代に入ってから栄養価の高さが注目され、一般家庭で食べられるようになりました。

一般的にピーマンと呼ばれるものは未熟な緑色の実を収穫したもので、熟すにつれて黄色、オレンジ色、赤色と変化していきます。

完熟して赤くなったものを赤ピーマンと呼び、独特の臭さが抜け、特有の香りと甘みが強くなります。

とくに子どもには苦手な野菜とされ、大人でも敬遠されがちですが、くせのない味に品種改良され、最近では人気野菜のひとつとなっています。

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いろいろなピーマン

多く出回っているのは未熟のうちに収穫した緑色のピーマンですが、カラフルな色彩で人気の高いカラーピーマン、肉厚で食べごたえのあるジャンボピーマン、苦みがなくて子供にも人気の小型ピーマンなど、種類が増えています。

[緑ピーマン]
緑ピーマンは、重さ30~40g、スーパーなどでよく見かけるもっともポピュラーな緑色のピーマンです。
果肉が薄めで独特の青臭さがありますが、歯ざわりがよいのが特徴です。

[赤ピーマン]
緑ピーマンが熟して赤色になったものです。
独特の青臭さが減って甘みが増し、栄養価も高くなります。
果肉はパプリカより薄く、肉質はかたくなります。

[小型ピーマン]
「ピー太郎」(品種)や「こどもピーマン」などと呼ばれる苦みの少ない小さなピーマンです。
シシトウのような細長い形で、長さは4~5cm、肉厚で甘みがあるのが特徴です。

[ジャンボピーマン]
甘味があり、肉厚で食べごたえのある大型のピーマンです。
パプリカとして扱われる場合もあります。

[カラーピーマン]
緑、黄、赤、オレンジ、紫、白、黒などのカラーがあります。
一般のピーマンより肉厚で甘みがあるのが特徴です。
とくに黄色と赤色は肉厚で甘みが強いです。

[バナナピーマン]
長さ10~15cmで、バナナのような形をしたピーマンです。
果肉が熟すにつれて黄緑色からクリーム色、赤へとだんだん変化していきます。
肉厚で甘く、さまざまな調理に利用できます。

ピーマンの育て方

栽培中のピーマン

4~5人の家族なら2~3株植えれば間に合うほどに実がなります。

病害虫は少なく、夏野菜の中では作り方はやさしいほうですが、寒さと乾燥が苦手なので注意します。

苗作りは温度管理が難しいので、家庭菜園では市販の苗を利用するのがよいでしょう。

市販されているような大きな実を収穫するには整枝が必要ですが、家庭菜園であれば支柱を立てて折れやすい茎を養生するくらいで、手間をかけなくてもよく育ちます。

梅雨の時期は雨が多く病気が発生しやすいので、葉が茂りすぎたら枝を適宣取り除き、風通しをよくしましょう。

概要

生育温度 25~30℃。
土壌酸度 5.5~6.7。
連作障害 あり。できれば4~5年以上あける。
育てやすい品種 京ひかり、京波、ニューエースなど。
元肥 苦土石灰と元肥を入れる。
苗の植える時期 気温がじゅうぶんに高くなってから(5月上旬)。
苗の植え方 畝幅:90cm。
黒マルチ:有効。
株間:1列、50cm。
支柱立て 長さ100~150cmの支柱を垂直に立てる。
栽培中の管理 整枝:一番花の下の脇芽をすべて摘み取る。
追肥:収穫が始まるころから2週間に一度。
水やり:夏場に晴天が続いて乾燥しているとき。
収穫 実の長さが5~7cmほどの大きさになったら。
病害虫 害虫:アブラムシ、ハダニ、アザミウマ、チャノホコリダニ、カメムシ、タバコガ、ヨトウムシなど。
病気:苗立枯病、尻腐病、青枯病、モザイク病、疫病など。

ポイント

  • 連作しない(4~5年間開ける)。
  • 寒さに弱いので、苗の植えつけはじゅうぶんに暖かくなってから。
  • 肥料切れに注意する。
  • 真夏に乾燥してるときは水やりをする。

栽培時期

ピーマンの栽培時期

※地域によって栽培時期は異なります。事前に確認してください。

ピーマンは寒さに弱いので、遅霜の心配がなくなってから苗を植えます。

育てやすい品種

京ひかり、京波、ニューエースなど。

[京ひかり]
夏秋どりの中早生種。
草勢が強く、耐病性があり、育てやすい品種です。
実は濃緑で色艶が良く、気温の低い時期でも肥大し、尻づまりが安定しているのが特徴です。

[京波]
夏秋どりの中型種。
草勢が強く、分枝力が旺盛で、多収の品種です。
実は肉厚で色艶が良く、そろいががよいのが特徴です。

[ニューエース]
極早生で肥大が良く、成り休みの少ない多収種。
肉厚でボリュームのある大きなダルマ形の昔ながらのピーマンです。

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ピーマンの育てやすい品種・カラフルな品種

畑の準備

畑の準備

ピーマンは連作障害の出やすい野菜なので、ピーマンを含むナス科(トマト、ナス、トウガラシ、ジャガイモなど)の野菜を4~5年は栽培していない場所を選びます。

また、酸性の土壌にやや弱いので、酸性に傾いた土壌ではかならず石灰を施して調整しておきます。

苗の植えつけの2週間前に、苦土石灰をまいてよく耕し、1週間前になったら、堆肥と化成肥料を施して耕し、畝を高めに立てて黒マルチを張ります。

ピーマンは過湿に弱いため、畝を高めに立てて水はけをよくします。

黒マルチは、雑草の抑制や、保湿や地温を上げる効果に期待できます。

苗の用意

1株にたくさん実がつくピーマンは、4~5人の家族なら2~3株あればじゅぶんなので、市販されている苗を植えるのが手軽です。

苗は、ホームセンターなどで本葉が7~8枚くらいついたものを購入します。

[よい苗]

  • 大きくてしっかりしている
  • 茎が太い
  • 本葉が7~8枚ついている
  • 葉に艶がある
  • 1番花の蕾が大きく、開花寸前である

4月中旬ごろから苗が出回りますが、ピーマンは寒さに弱いので、5月上旬に購入して植えます。

最近は多くの種類があるので、ラベルを見て特徴などをよく確認してから購入しましょう。

小さい苗しか手に入らない場合は、苗床などで一回り大きく育ててから植えるとよいですしょう。

苗を植える

ピーマンの苗を植え付けたところ

5月上旬、本葉7~8枚ついた苗を植えます。

苗を植えつける前に、わき芽をすべて取り除きます。わき芽を指でつまみ、折り取ります。

あらかじめ準備しておいた畝に、1列(または2列)で間隔を50cmとし、マルチに穴をあけ、植え穴をポットの大きさほど堀り、根鉢をくずさないように注意してポットから苗を取り出して浅く植えます。

植えつけたら、株元を軽く手で押さえて土と密着させ、たっぷりと水をやります。

仮支柱を立てて苗が倒れないように茎を結わきます。

芽かき

ある程度育ったら、一番花(最初に咲いた花)の下の節で枝分かれして伸びてくるので、それより下の脇芽はすべて摘み取ります。

芽かきは切り口を乾燥させるために晴れた日に行いましょう。

その後は、混み合ってきたら枝を適宣取り除き、風通しをよくします。

支柱立てと誘引

支柱を立てたところ

ピーマンは茎が弱く風で折れやすいので、支柱を立てて支えてやります。

活着して丈が伸びてきたら、株元から少し離れたところに、長さ100~150cmくらいの支柱を立て、紐で8の字に結びます。

茎を傷めないように緩めに結びましょう。

追肥

ピーマンは生育期間が長いので、肥料切れにしないように注意します。

収穫が始まるころから、2週間に一度のペースで、化成肥料を施します。

[追肥の方法]
マルチの裾を片側だけ開け、畝に沿って浅く溝を掘り、化成肥料を施して埋戻し、マルチを戻します。

水やり

夏場に晴天が続いて乾燥しているときは、畝間に水やりをすると効果的です。

短花柱花が多くなって落花するとき、乾燥しているようであれば、水やりを行いましょう。

水やりは、水の量が少しだとすぐに乾いてしまうので、土にしみ込むようにたっぷりやりましょう。

収穫

収穫適期のピーマン

実の長さが5~7cmほどの大きさになったら収穫します。

収穫が遅れると株が疲れるので、とくに一番果は早めに収穫します。

収穫の際は、茎が折れないように実を持って、ハサミなどでつけ根を切って収穫します。

病害虫

夏野菜の中ではつくりやすいほうですが、ウィルス病とアブラムシの被害が多いので注意します。

ピーマンにもっとも多い病気にモザイク病があります。アブラムシがうつす病気で、窒素成分が効きすぎるとアブラムシがつくので、肥料をやりすぎないようにします。

ほかにも、青枯病や疫病などが多いので、連作もよくありません。

梅雨の時期は雨が多く病気が発生しやすいので、葉が茂りすぎないように、葉をすかすなどして風通しをよくすると予防になります。

害虫では実に食い入るタガコガがいます。穴のあいた実を見つけたら、実を踏んで潰して処分します。

タバコガに注意

タバコガの幼虫が食害するので、見つけたら捕殺します。

ピーマンの実に穴が開いているときは、タバコガの幼虫が中にいる可能性があります。

実に穴があいている

タバコガやオオタバコガによるものです。

穴のあいた実の中には幼虫がいます。

1匹の幼虫が実を次々と食害していくので、穴のあいた実を見つけたら、すぐに摘み取って処分しましょう。

モザイク病に注意

若い葉が凸凹なるのは、モザイク病の症状です。

モザイク病はウイルスによる病気で、おもにアブラムシが媒介します。

窒素成分が効きすぎるとアブラムシがつくので、肥料のやりすぎに注意します。

発生すると感染が広がるので、すぐに抜き取って畑の外で処分します。

実の一部が黒く変色する

実の一部が黒く変色するのは、黒アザ果とよばれる生理障害です。

低温下での直射日光や、極度の乾燥によって起こります。

夏の乾燥時期に黒アザ果が頻発するときは、水やりをして対処しましょう。

実の一部が赤く変色する

ピーマンは熟すと自然に赤くなるものですが、早い段階で実の一部だけがオレンジや赤くなることがあります。

これは、実の中がタバコガによって食害を受けているためです。

すぐに摘み取って処分しましょう。

実の一部が白く変色する

実の一部が白く変色するのは、日焼け果とよばれるものです。

真夏の高温・乾燥期に多く発生します。

遮光ネットなどを被せて直射日光を遮り、、乾燥時期には水やりを行います。

ピーマンの先端が黒く変色する

実の先端が黒く変色するのは、尻腐れ病によるもので、カルシウム欠乏による生理障害です。

乾燥などによって石灰が不足すると起こります。

コンパニオンプランツ

[ピーマンと相性の良い野菜]
ネギ、人参、落花生、インゲン。

ネギの根に共生する微生物が繁殖してピーマンに病原菌がつくのを防ぐ効果があります。

ピーマンの株間に人参や落花生、つるなしインゲンなどを育てると、お互いの害虫を防ぐことができます。

たくさん採れたときの保存方法

ピーマンは冷蔵庫での保存が基本ですが、水気に弱いため、しまう前に水気はしっかり拭き取り、丸ごとポリ袋などに入れてきっちり密封し、冷蔵庫の野菜室にしまいます。

4~5日ほどはもちます。

熟した赤い実は栄養2倍!

ふつうピーマンは緑色のうちに収穫しますが、完熟させて赤くなると甘みが増し、栄養価はなんと2倍になります。

完熟させるには、収穫適期になった緑色のピーマンをさらに2週間ほど放置します。

完熟させると株が疲れやすくなり収量が落ちるので注意しましょう。

花が落ちてしまう

花が落ちてしまうなら肥料切れの可能性があります。

追肥を施してみましょう。

実がたくさんついていると株の負担になりますので、なっている実は若どりしましょう。

花は咲くのに実が大きくならない

ピーマンは暑さに負けずたくさんの実をつけるので、肥料を切れしないように育てるのがポイントです。

肥料過多でも木ボケしにくいものの、一度に与える肥料の量が多いと、根が弱く傷むので、肥料は薄く定期的に与えて切らさないようにします。

ピーマンは葉1枚ごとに1つの花が咲きますが、肥料切れしていると、花は咲いても実が大きくならずに止まってしまいます。

対策としては、すぐに追肥して、幼実はすべて取り除き、草勢の回復に務めます。

ピーマンの肥料不足の見分け方

ピーマンは栽培期間が長く、肥料が切れてしまうと草勢が弱くなり、落花して実がつきにくくなります。

花の状態をこまめにチェックして、肥料切れしているようであれば追肥します。

肥料が切れているかどうかは、雌しべの長さを見ます。

雌しべが雄しべよりも短いときは、肥料切れしているサインです。
(雌しべが雄しべよりも短い花を短花柱花といいます。)

じょうずに追肥してスタミナ切れさせずに育てれば、秋(10月末)まで収穫できます。

ピーマンの整枝は絶対に必要?

ピーマンもナスと同じで、枝が垂れ下がると、枝の伸びが悪くなり、実の肥大も悪くなります。

なので、支柱を立てて紐で誘引して茎を引き上げ、草勢を強く保ちながら育てるのが基本です。

しかし、家庭菜園では1番果の下の節の枝分かれ(最初に出た強い側枝)の下の脇芽はすべてかきとった後に放任しても、十分な量を収穫できます。

また、株間を広く開けていれば(60cm以上)、脇芽かきなしの放任でも問題はありません。

支柱を立てて紐で枝を誘引しながら育てるのも楽しいですが、手間を省きたい場合は、株間を広めにして放任しましょう。

ピーマンも更新剪定が必要?

ナスの更新剪定は、若返りの方法としてよく耳にしますが、ピーマンも更新剪定することによって、新しい側枝が伸びて秋まで収穫することができます。

ただし、ナスよりも夏の暑さや乾燥に強いので、肥料がうまく効いているようであれば、更新のための剪定は必要なく、更新剪定すると収穫できない期間ができてしまうので、元気に育っているようであれば更新剪定しない方が得策です。

収穫の遅れや肥料切れにより、なり疲れ(スタミナ切れ)を起こしていれば、8月上旬にナスのように更新剪定して若返らせましょう。

葉も食べられる

ピーマンの葉にはビタミン類が多く、油炒めや佃煮にするとおいしく食べられます。

種とり

ピーマンは交雑しやすいので、ピーマンの仲間である鷹の爪(トウガラシ)やシシトウなどは、なるべく近くに植えないようにします。

とくに鷹の爪は、交雑してしまうと辛みが出て食べられなくなります。

7月下旬~8月頃、実が真っ赤になってやわらかくなったら収穫します。

実を割って種をとり出し、天日で1日、日陰で1週間くらい乾かします。

乾いたら乾燥剤と一緒に封筒や瓶に入れて冷蔵庫で保存します。

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