オゾンという言葉は皆様にも馴染みがある言葉だと思います。
地球を覆っているオゾン層は、太陽からの有害な紫外線から守ってくれています。
また、最近ではオゾンを発生させにおいを除去する空気清浄機が販売されています。
このようなことから、オゾンにイメージを持っている方も多いと思いますが、実はオゾンは植物に悪影響を及ぼす大気汚染ガスでもあるんです。
オゾンって何?
オゾンは、酸素原子3つでできている分子です。
私達が呼吸をする際に必要な酸素(O2)が、紫外線などによって、オゾン(O3)ができます。
オゾンは強力な酸化作用を持っていて、殺菌・脱臭・脱色などの効果をもたらします。
実際に東京都や大阪市などの上水道の殺菌にはオゾンが使われています。
塩素に比べて、水に残留することがないため味が変わらずにおいしい水道水を提供することが出来ます。
オゾンは有害
しかし、強力な酸化作用を持っている分、濃度が高くなると生物に悪い影響があります。
オゾン濃度が高い時には目がチカチカしたり、喉が痛くなるなどの急性症状が出たり、ひどい時には呼吸器疾患になることもあります。
オゾンは植物にも大きな影響をもたらします。
植物は、葉っぱの裏にある気孔という穴から空気を吸収していますが、空気のオゾン濃度が高いと、その空気を直接植物が吸うことになります。
植物が高濃度のオゾンにさらされると、葉っぱに白い斑点が出来たり葉っぱが茶色くなるができたり、光合成が阻害されて農作物の終了が低下します。
現在、世界的にオゾンの濃度が上昇しており、特に夏季の日本では植物に有害なレベルのオゾンになっています。
埼玉県が行った研究では、オゾンを含む野外の空気と、オゾンを浄化した空気でコマツナを育てた場合、浄化した空気に比べ収量が半分になりました。
また、16品種のイネを使用した場合でも、16品種すべてでオゾンにより生産量が低下することがわかりました。
さらに、アメリカの品種より、日本の品種のほうが高いオゾン濃度に弱いことがわかりました。
これからどんどんオゾン濃度が高くなることが予想され、2050年には、イネの生産量が郡亜県や茨城県では30~40%ほど低下すると言われています。
可視障害からオゾンをみる
このようにオゾンは植物に悪影響を与えますが、そのオゾンに対してどのような対策があるでしょうか。
もし鉢植え程度の小さな植物であれば、活性炭フィルターなどで浄化した空気を流せば大丈夫です。
しかし野外で行う家庭菜園には、あまり現実的ではありません。
オゾンは水に触れるとすぐ分解する特性がありますので、こまめに水をかけてやることでオゾンの被害を少なくすることは出来ますが、これも大変ですね。
残念ながら、家庭でできるようなオゾン対策は難しいのが現状です。
オゾンは一人の力でコントロールできるものではなく、少なくとも街全体で取り組まなければなりませんが、オゾンは目に見えないため、人々の関心は殆どありません。
しかし、植物に出来る可視障害を見ることで、オゾン濃度の高さを間接的に見ることができます。
東京農工大学では、ハツカダイコンを用いた環境教育を行っております。
ハツカダイコンを天井が開いているアクリルの箱に入れ、一方にはそのままの空気を、もう一方には浄化した空気を流しながら育てます。
もし、大気がきれいであれば、両者で差はありませんが、大気のオゾン濃度が高い場合、そのままの空気を流しているハツカダイコンは、可視障害があらわれます。
実際に障害を目で見ることで、環境意識を高めるという活動を行っております。
皆様も食べるための家庭菜園だけでなく、大気の状態を図るために植物を見てみてはいかがでしょうか。
(文/渡邉ハム太郎)