(採れたての枝豆の味は格別)
枝豆は、大豆が熟す前の未熟果で、夏のビールのお供に最適です。
原産地は中国で、稲作とともに日本に伝わり、枝豆として利用されるようになったのは17世紀末の江戸時代からです。
今では品種は200種以上にもなり、枝豆専用の品種もあります。
畑の肉と呼ばれる大豆と同じく、良質なタンパク質に富み、栄養も豊富に含まれる夏の優秀食材です。
種をまいたときのハトなどの鳥害対策、夏の害虫対策をしっかり行えば栽培は容易で、手間もあまりかからず、初心者にもおすすめです。
枝豆の栄養
ビールと枝豆の組み合わせは体にとっても理想的で、枝豆に豊富に含まれるビタミン類とタンパク質にあるアミノ酸メチオニンがアルコールの分解を促し、肝臓や腎臓への負担を軽くしてくれます。
さらに、ビタミンB1がビタミンCと協力して夏バテ予防に効果的に働き、食物繊維も多く、腸をきれにしてくれるため、生活習慣病の予防などにも効果があるといわれています。
枝豆の種類
枝豆は実の色によって大きく3種類に分けられます。
[普通]
豆が緑色のいわゆる「青豆」で、一般的な枝豆です。
[茶豆]
新潟や山形県を中心に栽培されている枝豆。豆が少し茶色を帯びており、香りが高くて甘みも強いのが特徴です。
[黒豆]
丹波黒豆が有名で、甘みが強く、コクとうまみがあるのが特徴です。
枝豆の育て方
枝豆は肥料があまり必要なく、病害虫の心配も少ないので、簡単に育てられると思われがちですが、種をまいたときのハトなどによる鳥害や、夏の急な害虫の発生も大きく、防除をしなくては満足できる収穫は望めません。
鳥害対策は、苗を作って植えるか、種をまいたらすぐに防虫ネットでトンネルします。そのままトンネルして栽培すれば、夏のカメムシなどの害虫対策にもなります。
概要
生育温度 | 生育適温は20~30℃。温暖で多湿な気候を好む。 | ||||
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おすすめの品種 | 奥原早生、おつな姫、湯あがり娘、たんくろう、濃姫、丹波黒大粒大豆など。 | ||||
連作障害 | あり。2年以上あける。 | ||||
元肥 | 肥料はあまりいらない。苦土石灰は入れる。 | ||||
種まき時期(苗作り) | 4月下旬~6月中旬。 | ||||
苗の植え付け時期 | 苗の本葉が2~3枚になったころ。 | ||||
苗の植え付け方法 |
畝幅:90cm。 黒マルチ:有効。 株間:2~3列、35cm~40cm。 |
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栽培中の管理 |
摘心:本葉が5~6枚になったころ。 害虫対策:花が咲く前に防虫ネットなどでトンネルをする。 追肥:花が咲きはじめたころ。 水やり:開花後、日照りが続いて土が乾きすぎたら。 |
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収穫時期 | 莢(さや)が十分に膨らんだら収穫する。 | ||||
病害虫 |
害虫:アブラムシ、カメムシ類、ヨトウムシ、シンクイムシなど。 病気:あまりない。 畑にじかまきする場合は、種まき後に鳥に狙われやすいので注意する。 |
ポイント
- 元肥は窒素分を控えた肥料を入れるか、控えめにする。野菜を栽培した跡地ならば肥料はなくても可。
- 畑にじかまきする場合は、本葉がでるまで鳥よけをする。
- 本葉が5~6枚(背丈が30cmくらい)になったころに摘心する。
- 開花期以降は乾燥に注意し、土が乾きすぎたら水やりをする。
- 防虫ネットなどでトンネルして害虫を予防する。
栽培時期
※品種や地域によって栽培時期は異なります。事前に確認してください。
種まきは4月下旬からでき、時期をずらして数回に分けて栽培すると、長く収穫できます。
育てやすい品種
奥原早生、おつな姫、湯あがり娘、たんくろう、濃姫、丹波黒大粒大豆など。
枝豆の苗を作る
畑に直まきできますが、種をまいたときのハトなどの鳥害が大きいので、苗を作って畑に植えた方が安心です。
4月4週から、128穴のセルトレイ(または3号ポット)に用土を入れ、枝豆の種を1穴に2粒ずつ(ポットの場合は3~4粒)置いて指で押し込み、全体の表面を手のひらでならして種を隠し、水を静かにたっぷりかけます。
本葉が2、3枚に育ったころに畑に植えます。
畑の準備をする
枝豆は根に根粒が多くつき、その中にいる根粒菌によって空気中の窒素を吸収できる形に変えるので、窒素成分はあまり与えなくても育ちます。
元肥は窒素分を控えた肥料を入れるか、もしくは控えめにします。野菜を栽培した跡地では残肥があるため、元肥はなくても育ちます。
窒素成分を控えた元肥にしないと、葉ばかり茂って実の入りが悪くなるので注意します。
枝豆は連作を嫌います。枝豆を含むマメ科の野菜を2年以上は育てていない場所を選びます。
苗の植え付けの1週間前までに、苦土石灰をまいてよく耕し、90cm幅の畝を立て、黒マルチを張っておきます。
苗を植え付ける
苗の本葉が2~3枚になったころに植えます。90cm幅の畝に2~3列とし、株間を35cm~40cmとり、セルトレイから苗を丁寧に取り出して植えます。
[苗の植え付け手順]
- 植え付け位置に植え穴を掘る(スコップを使用する)。
- 植え穴にたっぷり潅水して水が引くのを待つ。
- セルトレイから苗を丁寧に取り出して植え穴に植える。
- 株元に土を寄せて軽く押さえて安定させる。
- 水をたっぷりやる。
摘心(ピンチ)する
本葉が5~6枚(背丈が30cmくらい)になったら、上部の芽を指やハサミで摘み取って摘心(ピンチ)します。
摘心することによって脇芽の発生を促し、徒長の防止と、莢の付きが良くなります。
防虫ネットでトンネルして害虫対策
夏になると害虫が多く発生し、実に食い入るシンクイムシや、実の汁を吸うカメムシ類の防除をしなくては収穫できなくなります。
遅くとも花が咲くまでに、防虫ネットや寒冷紗などでトンネルして、害虫を防除します。
生育するにつれてトンネルの中は窮屈になりますが、収穫が終わるまでトンネルして育てます。
⇒ 枝豆の鳥害・虫害の防除
⇒ 夏の枝豆栽培は害虫対策をしよう
追肥をする
花が咲きはじめたころ、株間か株のまわりに化成肥料を控えめに施します。
水やりをする
開花の時期に水切れすると、実があまりつかなくなり、実入りも悪くなります。
雨が降らずに晴天が続いて土が乾いているときは、朝か夕方にたっぷり水をやりして、乾燥させないようにします。
収穫する
莢の中の実が十分に膨らんだら、豆がやわらかいうちに株ごと引き抜いて収穫します。
大きくなった実を摘み取って収穫すると、株元や上部の未熟莢も無駄なく充実させることができます。
枝豆の根に付いた丸い粒
枝豆の株を抜いたとき、根のところどころに丸い粒が付いてませんか?
この粒は根粒といって、根粒菌という細菌が住む粒です。
根粒菌は、枝豆からリンゴ酸などの栄養分をもらう代わりに、空気中の窒素を植物の使えるように固定して枝豆に供給します。
根粒と枝豆はお互いに助け合って共生しており、枝豆に害を与えるものではありません。
発芽しない
枝豆は最低地温が15℃以上になってから種をまくことが重要です。
気温によっては1週間では発芽せず、2週間以上かかることもあります。
また、発芽を早めるるために種を一晩水に漬けたり、種まきのときに水をやりすぎると、種が腐ってしまって発芽しなくなります。
ハトなどの鳥害にも注意が必要で、発芽直後に食べられてしまうこともあります。
気温の上がる4月下旬から種まきを行い、鳥害対策にできれば苗を作って移植し、畑に直まきする場合は、べたがけ資材で被覆するなどして対策しましょう。
葉が大きく色が濃い
枝豆は根に共生する根粒菌が空気中の窒素を供給してくれるため、窒素成分を控えめにするのが鉄則です。
窒素成分が多すぎると、つるボケを起こして過剰に茂り、さやのつきが悪くなります。
対策としては、元肥の施しすぎに注意し、生育状態がよければ追肥もしません。
栽培を数回に分けて長く楽しむ
枝豆を最高に美味しく食べるには、収穫適期の3~5日のうちに収穫しなくてはなりません。
食べきれない分を放っておくと、収穫が遅れて実が硬くなり、味も落ちていきます。
冷凍保存もできますが、新鮮な枝豆と比べて味は落ち、莢ごと冷凍では冷凍庫のスペースを圧迫します。
そこで、収穫を長く楽しむために、数回に分けて栽培します。
栽培時期をずらすことで、収穫適期の新鮮な枝豆を長く楽しむことができます。