モロヘイヤは、アオイ科・ツナソ属に分類される緑黄色野菜です。
香りや味にクセがなく、かすかに甘みがあり、生葉を刻むと独特の粘りが出て、茹でるとトロッとして海苔のようになめらかになることから、「トロロナ」とも呼ばれます。
中近東からアフリカ北部原産で、砂漠地帯でも生育する貴重な野菜として、5000年以上前から栽培されてきました。
古代エジプトの不治の病に苦しむ王様がモロヘイヤのスープを飲んだところ治ったという言い伝えから、アラビア語で「王様の野菜」という意味のムルキーヤが語源となっています。
注目すべきは栄養価の高さで、美容にも効果があり、クレオパトラも愛した野菜といわれています。
日本に導入されたのは1980年代と比較的新しい野菜です。
夏の青菜の少ない時期に収穫できるうえ、鉄やカルシウムを豊富に含み、非常に栄養価の高い野菜として注目されています。
さまざまな健康野菜がブームになるなかで、現在は群馬県をはじめ、日本全国各地で栽培されるようになりました。
和名を「シマツナソ」といい、野菜としてだけではなく、ツナソ(綱麻)とともにジュート(インド麻)と呼ばれる繊維をとるためにも栽培されています。
種子にはストロファチジンという毒があるので、食べないように注意しましょう。
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目次
モロヘイヤの種には毒があるので注意
モロヘイヤの完熟した種子には毒性の強い強心糖体のストロファンチジンが含まれており、長崎県では家畜が食べて死亡する事故が起きています。
ただし、葉と茎には毒はまったくないので安心してください。
種まきに使用するために購入した種や種とりした種など、幼児やペットが誤って食べないように取扱いに注意しましょう。
モロヘイヤの育て方
暑さに強く、気温の高い真夏にグングン元気に育ちます。
夏の葉もの野菜が少ない時期に収穫できるうえ、栄養価が非常に高いので、夏場に重宝する野菜です。
発芽適温は30~35℃と他の野菜と比べて高いので、種まきは気温がじゅうぶんに上がる5月以降に行います。
秋まで長くやわらかい茎を摘みとるには、主枝を摘心して、側枝をたくさん出させ、こまめな収穫を繰り返すことです。
生育が旺盛で、虫がつきにくく、秋に花が咲くまで収穫でき、初心者でも簡単につくれます。
概要
発芽温度 | 25~35℃。 | ||||
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生育温度 | 25~30℃。 | ||||
土壌酸度 | 6~6.5。 | ||||
連作障害 | あまり出ない。 | ||||
品種 | 品種として成立したものはない。 | ||||
元肥 | 苦土石灰と元肥を入れる。 | ||||
種まき時期(苗作り) | 5~6月。 | ||||
苗の植えつけ時期 | 苗の本葉が5~6枚になったころ。 | ||||
苗の植えつけ方法 |
畝幅:90cm。 黒マルチ:有効。 株間:2列、30~40cm。 |
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栽培中の管理 |
摘芯:防虫ネットなどでトンネルする。 水やり:夏にひどく乾燥しているとき。 追肥:収穫開始後、20~25日間隔。 |
||||
収穫 | 葉先の15~20cmくらいのやわらかいところを折り取って収穫。 | ||||
病害虫 |
害虫:、アザミウマ類、ハダニ類、ネコブセンチュウ、オンブバッタ、マメコガネ、ヨトウムシなど 病気:うどんこ病、灰色かび病など。 |
ポイント
- 種まきはじゅうぶんに暖かくなってから行う。
- 主枝を摘芯して側枝をたくさん出させる。
- 夏にひどく乾燥しているときは水やりをする。
- 生育が旺盛なので、草丈を一定に保つようにこまめに収穫する。
時期
※品種や地域によって栽培時期は異なります。事前に確認してください。
モロヘイヤは発芽温度が25~35℃と高いため、じゅうぶん暖かくなってから栽培をスタートします。
品種
品種として成立したものはありません。
苗を作る
モロヘイヤの種は寿命が長いので、3~4年保存した種でも発芽します。
高温性野菜なので、気温がじゅうぶん高くなってから種をまきます。
発芽温度25~30℃と高く、発芽しにくいので、一晩水につけてからまくか、種を多めにまくとよいでしょう。
種は強い有毒成分を含むので、幼児やペットが食べないように取扱いに注意しましょう。
5~6月にポットやセルトレイに種をまいて苗をつくります。
9cm(3号)ポットやセルトレイに用土を8~9分目まで入れ、3カ所に指で窪みをつけて種を一粒ずつまきます。
土を薄く被せて手のひらで軽く鎮圧し、水をたっぷりやります。
発芽までは乾燥に注意し、発芽後は毎朝水やりをします。
本葉1~2枚で生育の悪い株を間引きして1~2本を残し、本葉が5~6枚のころに畑に植えます。
畑の準備
日あたりがよく、水はけがよければ、土質は選びません。
モロヘイヤは連作障害が出ないので、連作もできます。
酸性の土壌を嫌うので、モロヘイヤを育てる場所はかならず石灰類を施して酸度を調整しておきます。
苗を植える2週間前までに、畝に苦土石灰を施して耕しておき、1週間前に、畝に元肥を入れてよく耕し、畝を立てて黒マルチを張ります。
黒マルチは、雑草の抑制や、地温を上げる効果に期待できます。
苗を植える
苗の本葉が5~6枚になったら、準備しておいた畝に植えつけます。
2列で、株間を30~40cmとし、畝に根鉢と同じ大きさの穴を掘ってたっぷり水をやり、水がひいたら、根鉢を崩さないように丁寧にポットから苗を取り出し、植えます。
植え終えたら、まわりの土を株元に寄せて押さえて株を安定させ、水やりをします。
摘芯
主枝を摘みとることを摘芯といいます。
摘芯しないで放っておくと、すぐに主枝が1m以上になってしまいます。
摘芯することにより、側枝が多く伸び、草勢がコンパクトになります。
草丈が30cmくらいになったら、先端を摘みとります。
摘芯すると、わき芽が次々に出てきて、充実した株に育ちます。
手入れ
モロヘイヤは高温や水分を好む作物で、乾燥に強いですが、土壌の水分が不足すると葉がかたくなってしまいます。
夏にひどく乾燥しているときは畝間に水やりをしましょう。
このとき、土の表面が濡れる程度ではすぐに乾いてしまうので、土にしみ込むようにたっぷりやります。
収穫
草丈が50~60cmになったら、収穫を開始します。
葉先の15~20cmくらいのやわらかいところを折り取ります。
その後、わき芽が伸びて収量が増えます。
草丈を一定に保つようにこまめに収穫します。
追肥
モロヘイヤは栽培期間が長いので、肥料を切らさないように育てるのが多く収穫するコツです。
収穫開始後に、20~25日間隔で追肥を行います。
切り戻し
気温の高い夏になると旺盛に生育します。
草丈が高くなりすぎると、収穫しにくく、かたくなってしまって食味も落ちるので、低い位置まで切り戻します。
花が咲いたら収穫を終えよう
モロヘイヤは日が短くなると開花する短日植物です。
秋になると花が咲いて種ができます。
花芽ができると新芽の発生が止まり、茎葉はかたくなります。
熟した種子は毒をもっているので、花が咲いたら念のため収穫を終えましょう。
病害虫
モロヘイヤは病害虫にも強く、あまり心配することはありません。
うどんこ病、灰色かび病が発生することがあります。
病気が発生したような葉は取り除き、被害が拡大しないように努めます。
害虫では、アザミウマ類、ハダニ類、ネコブセンチュウ、オンブバッタ、マメコガネ、ヨトウムシなどが発生することがあります。
よく観察して、害虫を見つけたらすぐに駆除することが大切です。
生育初期に花を咲かせてしまう原因
モロヘイヤの熟した種子には毒があるので、花が咲いたら栽培を終わりにしたいところですが、栽培方法を誤ると、生育の初期の段階から花が咲いてしまい、種ができてしまいます。
モロヘイヤは日が短くなると開花する短日植物です。
日照時間の短い春の育苗中に低温にあたると、条件を満たすため、分化して花を咲かせます。
照明などを使用して開花を抑制する長日処理などの方法もありますが、家庭菜園でできる簡単な対処方法は、早まきは避け、じゅうぶんに気温が上がってから種をまくことです。
苗を購入する際は、早植えにならないように注意しましょう。
直まきするには
モロヘイヤは高温性野菜で寒さに弱いので、気温がじゅうぶん高くなってから種をまきます。
2列で、株間を30~40cmとし、一カ所に5~6粒ずつ、種と種の間を1cm以上あけてまきます。
覆土をしたら、手のひらで軽く押さえて、たっぷり水をやります。
本葉2~3枚になったら、生育のよいものを1か所に1~2本残し、ほかは間引きます。
苗を購入するには
家庭菜園では2~3株あればじゅうぶんなので、家庭菜園では苗を購入して 栽培した方が経済的です。
節間が詰まっていて、葉の緑が濃い苗を選びましょう。
茎がヒョロヒョロと伸びている苗は避けます。
種とり
秋になると黄色い小さな花が咲き、その後、細長いサヤができます。
サヤの中には茶褐色の種がたくさん入っていて、完熟すると空色になります。
茶色くなったサヤを切り取り、よく乾燥させます。
カラカラに乾燥したら、手でもめば種子がとれます。
完熟した種子には毒がありますが、素手でさわっても大丈夫です。
モロヘイヤの発芽率は80%と高くないので、やや多めに種とりしておきます。
モロヘイヤの種の寿命は長く、3~4年保存した種でも発芽しますが、発芽がよくないので、種を多めにまくとよいでしょう。
モロヘイヤの保存方法
モロヘイヤは収穫後、どんどん鮮度が落ちていきます。
たくさん収穫したときは、冷水に浸したあと、水けをきってポリ袋に入れて冷蔵庫で保存します。