ツルムラサキは熱帯アジア原産で、東南アジアから中国南部にかけて広く栽培されている緑黄色野菜です。
つる状で葉のつけ根に紫の実をつけることからこの名前がつきました。
バセラ、インディアンホウレンソウ、セイロンホウレンソウ、セイロンスピナッチなどと呼ばれ、中国では落葵(ラオクエイ)と呼ばれています。
日本では古くから染料として利用してきましたが、野菜として作られるようになったのは1970年代からです。
葉、茎、花軸とも食べられますが、おもに葉やつる先15cmくらいまでの若い茎を食用にします。
茎や葉が紫がかるタイプと、茎が太めになる緑のタイプがあり、ともに加熱すると土臭いにおいと独特のぬめりが生まれます。
油が合うので天ぷらや炒め物にしたり、さっとゆでて水に取り、ホウレンソウと同様に調理するとおいしく食べられます。
最近では、ビタミンCやカルシウムを非常に含む夏場の健康野菜として、栄養価の高さが注目されています。
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ツルムラサキの栄養と保存と調理
目次
ツルムラサキの種類
品種はほとんどなく、葉や茎が紫紅色の赤茎種と、茎も葉も鮮やかな緑色の緑茎種があります。
赤茎種も食べられますが、食用でツルムラサキというと緑茎種を指します。
[紫茎種]
葉や茎が紫紅色のもので、明治時代に渡来しました。
[緑茎種]
葉と茎が緑色の大葉種で、江戸時代に導入されました。
ツルムラサキの育て方
ツルムラサキは、肉厚のつややかな葉をつけて、夏から秋にかけて旺盛に生育する、つる性の野菜です。
熱帯アジアが原産で暑さを好み、寒さには弱いので、種まきはじゅうぶん暖かくなってから行います。
早めに収穫してわき芽の発生を促せば、長い間収穫できます。
10月から11月に黒紫色に実が熟し、霜にあたると枯れます。
どんなところでもよく育ち、病害虫の心配もほとんどありません。
支柱を立てて誘引していく方法もありますが、ここでは手間のかからない支柱を立てずに放任して育てる方法を紹介します。
概要
生育温度 | 20~30℃。 | ||||
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土壌酸度 | 5~7。 | ||||
連作障害 | あまり出ない。 | ||||
品種 | 紫茎種と緑茎種がある。 | ||||
元肥 | 苦土石灰と元肥を入れる。 | ||||
種まき時期(苗作り) | 5月上旬~6月下旬。 | ||||
苗の植えつけ時期 | 苗の本葉が4~5枚になったころ。 | ||||
苗の植えつけ方法 |
畝幅:90cm。 黒マルチ:有効。 株間:1列、60cm。 |
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栽培中の管理 |
害虫対策:防虫ネットなどでトンネルする。 追肥:生育が落ちているようであれば。 |
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収穫 | つるの先端15cmくらいのところを切る。 | ||||
病害虫 |
害虫:、アブラムシ、ハダニ、ヨトウムシなど。 病気:うどんこ病、苗立枯病など。 |
ポイント
- 高温期に栽培する。
- 日当たりのよいところで育てる。
- 早めに収穫してわき芽の発生を促す。
- つるの先端15cmくらいを収穫する。
栽培時期
※品種や地域によって栽培時期は異なります。事前に確認してください。
ツルムラサキは発芽温度が25~30℃と高いため、じゅうぶん暖かくなってから栽培をスタートします。
品種
とくに品種に分かれてはいませんが、紫茎種と緑茎種があります。
苗を作る
畑に直接種まきをして育てることもできますが、苗を作って畑に植えつけた方が管理が楽に行えます。
発芽適温は25~30℃と高めなので、5月上旬~6月下旬、じゅうぶん暖かくなってから種をまきます。
9cm(3号)ポットに用土を8~9分目まで入れ、3カ所に指で窪みをつけて種を一粒ずつまきます。
土を薄く被せて手のひらで軽く鎮圧し、水をたっぷりやります。
発芽までは乾燥に注意し、発芽後は毎朝水やりをします。
苗であっても害虫がつくので、寒冷紗や防虫ネットを覆うなどして対策します。
本葉2~3枚で生育の悪い株を間引きして1本を残し、本葉が4~5枚のころに畑に植えます。
畑の準備
ツルムラサキは連作が可能ですが、できれば連作せずに1年以上あけてください。
吸肥力が強く、やせた土地でもよく育ち、元肥が多すぎると初期の生育が悪く、アブラムシがつきやすくなるため、元肥は入れないか、少なめに施します。
苗の植えつけの2週間前に、苦土石灰をまいてよく耕し、1週間前になったら、堆肥と化成肥料を施してよく耕し、畝を立てて黒マルチを張ります。
黒マルチは、雑草の抑制や、地温を上げる効果に期待できます。
苗を植える
苗の本葉が4~5枚になったころ、1列とし、60間隔で植えます。
植えつけ位置にポットと同じくらいの植え穴を掘り、水をたっぷり入れて引くのを待ち、ポットから根鉢を崩さないように苗を取り出し、丁寧に植えます。
植えつけたら、まわりの土を株元に寄せて株元を軽く押さえて安定させ、もう一度たっぷりと水をやります。
害虫対策
ツルムラサキは害虫の心配がほとんどありませんが、アブラムシやヨトウムシなどがつくことがあるので、防虫ネットでトンネルした方が安心です。
栽培中の手入れ
日光を浴びると、太い茎が元気良く伸びはじめます。
追肥
株の様子を見て、生育が落ちているようであれば、株のまわりに化成肥料をまきます。
目安としては、生育が旺盛になったころから、20日おきくらいです。
水やり
土壌の乾燥には強いですが、乾燥しすぎると生育が鈍くなるので、ひどく乾燥しているときは水やりをします。
追肥のあとに水やりをするとより効果的です。
収穫
背丈が60cmくらいになったころ、つるの先端15cmくらいのところを切って収穫します。
葉、花、つるのすべてが食用にできます。
収穫後、次々とわき芽が出てきて、秋の終わりまで収穫できます。
収穫が遅れると硬くなるので、若くてやわらかいうちに採りましょう。
直まきするには
畑に直まきする場合、1列の60cm間隔で、1か所に2~3粒の種をまきます。
本葉の枚数が4~5枚になったら間引いて1か所1本にします。
支柱を使って育てる方法
ツルムラサキのツルが伸びはじめたら、長さ2mほどの支柱を合掌型に立てて、茎をゆとりをもたせて8の字に支柱に結んで固定します。
草丈が50~60cmを越えたら、ツルの先端15cmくらいのところを切って収穫します。
収穫後、わき芽が伸びるので、そのわき芽を支柱に誘引し、先端を収穫します。
ツルムラサキは生育が旺盛で、ツルがどんどん伸びるので、そのつど支柱に茎を誘引していきます。
挿し芽で増やそう
つるの先端15cmくらいのところを切り取り、下葉を切り取り、茎を斜めにカットします。
コップなどで水に1晩挿してから、培養土などの土に挿しておくと、10日ほどで根が出てきます。
種とり
夏から花穂ができて開花します。
秋にはたくさんの実をつけ、簡単に種を採ることができます。
花芽も食べられる
夏から秋になると花芽をつけます。
ツルと同様に茹でて食べられます。