農薬の基礎知識

スポンサーリンク

現在栽培されている野菜の品種では、次の3つの理由により農薬が不可欠となっています。

  1. 農耕地の生物多様性の欠如
  2. 品種改良により病害虫への抵抗力を失った農作物
  3. 栄養価の高い農作物の栽培

人間が食物として摂取するために、収穫量をより多くするとともに、不快な味をなくし、おいしい味を追求して、栄養価の高い農作物を品種改良してきました。

その一方、人工的な農作物は、人間の手で育てられ、保護されてきたために、自然の植物の持つ病害虫に対する抵抗力を失ってしまったのです。

病害虫を駆除するために農薬を使うことで、ますます抵抗力は弱くなり、もはや農薬なしでは病害虫の餌食となるしかないようになってしまっています。

この状況を改善し、農薬の使用をやめるには自然農法に頼るしかありません。

雑草を増やし、野菜自身の持つ自然治癒力を高めていくしか方法はないのです。

農薬の定義

農薬とは「農作物の保護と生長の調整の目的で使用されるあらゆる資材の総称」と定義されています。

病害虫の防除に使えば、食酢も農薬ということになります。

農薬の毒性

農薬はその毒性の程度により毒物、劇物と呼ばれるものがあり、「毒物及び劇物取締法」により農薬のラベルには「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」と表示されています。

毒物・劇物は購入時に署名・捺印する必要があり、徹底的な保管管理をする必要があります。

毒物:体重1kgあたりの致死量が50mg以下。
劇物:体重1kgあたりの致死量が50~300mg。

この両者に該当しないものは、普通物として表示の義務はありませんが、毒性のあるものがあります。

農薬使用時はラベルに示された「使用上の注意事項」をよく読んでください。

農薬の種類

農薬は形状によって次のような種類があります。

必ず使用説明書に書いてある使用時期、使用量などを守り、適切に使います。

水で薄めて使用する液状のもの

液剤・・・水に農薬の成分を溶かしたもの(水で薄めると透明に)
乳剤・・・水に溶けない成分を乳化剤で溶かしたもの(水で薄めると白濁液に)
フロアブル・・・水に溶けない成分を微粉砕して水などの液体に浮遊させたもの(水で薄めると白色に)

水で薄めて使用する粉状のもの

水溶剤・・・水に溶ける成分を水溶性の粉と均一に混ぜたもの(水で薄めると溶けて透明に)
水和剤・・・水に溶けない成分を粉と均一に混ぜたもの(水に溶けると白色に)

そのまま使用するもの

粉剤
粒剤
油剤・・・水に不溶で表面に広がり、葉や茎に付着して害虫を防除する

特定農薬

2002年改正の農薬取締法で、農薬として使用するためには登録が必要ですが、ある特定の物質が、農薬として登録義務を持たないように決められています。

このようなものを「特定農薬」といいます。

特定農薬は「農薬ではない農薬」であり、「特定防除資材」という通称が与えられています。

通常の農薬は製品ごとに登録する必要があるのに対し、特定農薬は含まれる成分で指定されます。

現在、重曹、食酢、地域の天敵の3種が指定されています。

また、現在指定が保留されているものに、木酢液、牛乳、粉ミルク、米ぬか、ビール、菜種油、コーラ、作物抽出物、植物抽出液、中性洗剤、食品添加物、アルカリイオン水、アルコールなどがあります。

農薬を使わない栽培法

農薬を使用するのは、大規模に農業を営んでいる農家が主であり、一般の家庭菜園では、できるだけ農薬の使用を控えるようにするのが望ましいといえます。

農薬を使わないで病害虫の被害を抑制する方法に次のようなものがあります。

生物的防除

その地域に土着していない天敵を外部から導入し、害虫の発生を永続的に抑制する方法です。

土着天敵とはその地域の畑や水田の生態系にもともといる生物で、害虫被害を軽減してくれるものをいいます。

農薬として登録されている天敵生物には次のようなものがあります。

アブラムシ・・・ナナホシテントウ
タバココナジラミ・・・クロヒョウタンカスミカメ
アザミウマ・・・タイリクヒメハナカメムシ
ハダニ・・・ミヤコカブリダニ

物理的防除

光や熱、音など物理的な方法で害虫の被害を減少させる防除をいいます。

侵入遮断、行動制御、殺虫に大別されます。

侵入遮断:物理的な障害を作って虫の侵入と害を防ぐ方法
行動制御:虫が苦手な光などを利用する方法
殺虫:粘着リボンなど

耕種的防除

農薬隆盛の栽培の反省から、いま耕種的防除が見直されてきています。

特に栽培期間の長い果樹栽培では、耕種的防除の重要度が高いといえます。

輪作:異なる作物を同じ畑に一定の順序で繰り返し得る。
間作:栽培している作物の畝間や株間に異なる種類の作物を植える。
混植:同じ畑に栽培期間が似ている作物を栽培する。

また、次のような一般に知られている知恵も農薬の代わりとして使えます。

  • 石灰、米ぬか、尿素も農薬として使える。除草剤に尿素を混ぜるのはアメリカでは一般的。
  • 納豆菌液は納豆と水をミキサーにかけたもので、作物の上から散布すると、斑点病や灰色かび病、白さび病、葉カビに効果がある。
  • ナメクジを撃退するのには、塩やビールの誘因は効果ないので使わず、ナメクジ用防除剤(主成分:メタアルデヒド)を使う。
  • みかんの皮を乾燥させ、細かく砕いて畑にまくと、アブラムシを撃退し、赤さび病、立ち枯れの防止になる。
  • 酢は有機酸や酢酸、糖分やアミノ酸を豊富に含んでおり、防除に活用できる。有機酸は作物体内に窒素の代謝を促進し、作物の健全な成長を助け、病害虫に強くする働きがある。酢酸にはカビを抑える殺菌効果がある。酢を散布するときは水で50倍に薄めて使う。
  • トウガラシを作物と一緒に育てると、防虫、抗病原菌効果がある。トウガラシを水につけておくだけでも効果がある。辛いトウガラシエキスが染み出した液を5倍ほどに薄めて使うと、アブラムシ、アオムシ、ヨトウムシなどに効果がある。粉末は畑にまいてモグラやネズミよけに使える。
スポンサーリンク